公開日 2020年08月03日
更新日 2022年02月15日
旧公会堂について| 旧公会堂の歴史 | 平成~令和の保存修理 | 工事の進捗状況 | パンフレット
重要文化財旧函館区公会堂 外観(修理前)
旧公会堂 2階御座所(修理前)
旧公会堂 2階大広間(修理前)
旧公会堂について
西部地区のランドマーク,元町公園の上にあります国の重要文化財「旧函館区公会堂」は,
明治43年(1910年)に現在の場所に建てられました。
明治40(1907)年の大火で町会所(および同所にあった商業会議所)が焼失したことから,
集会所や商業会議所事務所として計画されました。
大広間や大食堂のある2階建ての「本館」と平屋建ての「附属棟」の2棟からなり
本館は昭和49年(1974年),附属棟は昭和55年(1980年)に国の重要文化財に指定されました。
公会堂の平面図(修理前)
旧公会堂の歴史
〇明治43年(1910)
絵葉書(函館市中央図書館所蔵)
市民の集会場,商業会議所の事務所として建てられました。
建築費用約5万8千円のうち5万円を初代相馬哲平が寄附しました。
また,翌明治44年(1911)には皇太子(のちの大正天皇)が
北海道行啓の際に宿泊所とされました。
〇大正期から戦時中(1912-1945)
絵葉書(函館市中央図書館所蔵)
商業会議所の事務所が移転し,会議,お祝い,演奏会や展覧会などの会場として
市民に広く利用されました。
昭和2年(1927)には作家の芥川龍之介と里見弴が講演のため訪れています。
この頃外壁の色が黄土色に変更され、屋根の飾りが取り外されています。
〇戦後の混乱期(1945-1956)
古写真(函館市中央図書館所蔵)
戦後の混乱期には軍の司令部や病院などとしても使われ,
その後は海難審判所や営林局の事務所が置かれました。
昭和29年(1954)の洞爺丸台風の際には1階大食堂で海難審判が開かれました。
さまざまな用途で使われる中,3箇所の車寄せが取り外されていました。
〇昭和32年~54年(1957-1979)
保存修理工事報告書から抜粋
再び市民の集会場として利用されるようになりました。
車寄せは元に戻され,外壁の色はピンク色と白色に塗り替えられました。
明治期の洋館として歴史的価値を評価され,
昭和46年(1971)に北海道の有形文化財,昭和49年(1974)には国の重要文化財に指定されました。
〇昭和修理(1980-1982)
保存修理工事報告書から抜粋
建築から約70年の間大きな修理をしてこなかったため,建物全体に傷みが出ていました。
そこで,昭和55年から57年にかけて初めての根本的な保存修理工事を実施しました。
これまでにどのような建物の改変があったのかを念入りに調べたところ,
旧公会堂の外壁の色は初め青灰色と黄色であったことや
館内の部屋割に変更があったことが分かりました。
調査結果をもとに,皇太子(のちの大正天皇)が宿泊された
明治44年当時の姿に建物を復元しました。
青灰色と黄色の鮮やかなカラーリングは
淡いピンク色と白色に馴染んでいた市民の間で議論を呼びました。
〇昭和修理以降(1982-2018)
市民および観光客向けに建物を一般公開するようになりました。
また,当時の社交界の華やかさを体験できる貸衣装サービスも行われ,
年間約15万人が訪れる市内有数の観光名所となりました。
そのほか音楽団体によるコンサートや地元高校生による野点(のだて。
野外でお茶を点てること)など生涯学習施設としても使われました。
復元された建物やカーテン,建築当時から残る洋風家具は
当時の函館の繁栄ぶりを伝える貴重なものです。
平成~令和の保存修理
市内でも有数の観光名所である旧公会堂ですが,前回の保存修理から約40年が経過し,
建物全体に傷みや歪みが見られることから,平成30年(2018)10月1日から令和3年(2021)4月25日まで公開を中止して,
建物の保存修理工事を実施しました。
〇耐震診断(平成26年度(2014))
耐震診断(構造検査)
平成23年(2011)に発生した東日本大震災により,多くの文化財建造物に被害が出ました。
そこで,修理前に建物の地震に対する強さを確認しました。
大地震により建物が倒れて壊れる可能性があると診断されたため,
修理にあわせて補強をすることにしました。
文化財の耐震対策についてより詳しく知りたい方はこちらから
〇保存活用計画の策定(平成27年度~平成28年度(2015-2016))
活用のコンセプト
重要文化財としてこれからも大切に保存していくために,
保存修理などについての考え方を定めました。
また,建物の保存に影響のない範囲で,建物を積極的に活用していくという方針も定めました。
より詳しく知りたい方は→ 重要文化財旧函館区公会堂保存活用計画(市ホームページ)
〇保存修理工事(平成30年度~令和2年度(2018年-2020年))
保存修理工事
各所が傷み,建物に歪みが出ていました(修理前)
文化財建造物を残していくためには,周期的な保存修理が欠かせません。
旧公会堂も大規模な保存修理を行う時期を迎えていますので
傷んだ部分を修理し,歪みを直します。
旧公会堂には今も建築当初の部材が多く使われており,
全てを新しい部材に交換すると建物の価値が損なわれてしまいます。
残せる部分は残し,多少の傷みは補修して再使用し
再使用ができないくらい傷んだものだけを新しい部材に交換します。
耐震対策工事
「地震から文化財建造物を守ろう!Q&A」から抜粋
旧公会堂の周辺は地盤が丈夫なためこれまで大きな地震被害は出ていませんが,
大規模な地震が起きた場合,大きな被害を出す可能性があるという耐震診断の結果を
踏まえて利用者の安全を確保し,公会堂を末永く保存していくために
地震への対策を行います。
耐震性能を高めるため,壁の中や天井裏など表からは見えない場所に補強材を入れます。
2階大広間リノリウムの復元
昭和修理中に発見されたリノリウムの断片
旧公会堂の床にはリノリウムという天然素材の床材が使われていました。
昭和修理前のリノリウムは無地でしたが,修理中に柄のついたリノリウムの断片が見つかりました。
また,大広間で撮影した古写真に柄のついた床が写っていました。
復元リノリウム試作品と旧リノリウム断片
無地のリノリウムにデジタル印刷で色を重ねて柄を再現します。
古写真と断片から,寄木風の格子模様であることが分かりました。
断片の汚れを落としたところ,濃い茶色と薄い茶色と白色の3色が確認されました。
2階大広間天井漆喰の補強
2階大広間天井漆喰の強度試験
2階大広間の天井は漆喰塗りです。
館内の天井漆喰の強さを測定したところ,大広間の天井漆喰は下地材と漆喰の接着が弱く
漆喰が落下する可能性があるという結果が出ました。
2階大広間天井漆喰の補強
来館者の安全を守るため大広間の天井漆喰に補強をします。
雨漏りなどで傷んだ部分をはがし,メッシュ材とワイヤーで押さえて
接着力の強い塗料で天井と漆喰の密着度を上げます。
〇防災・設備工事(令和元年度~令和2年度(2019-2020))
修理前の設備
近年火災により被害を受ける文化財が増えています。
旧公会堂は木造の建物であり,一度火災にあうと大きな被害を受けることが予想されます。
昭和修理の際に整備した火災報知器や消火栓など,重要文化財に必要な防火設備を更新します。
また,利用者が使いやすい建物にするため,照明やトイレ,暖房などの設備を整備します。
〇展示改修(令和元年度~令和2年度(2019-2020))
上:修理前の展示,下:修理後の展示(イメージ図)
昭和修理の時に整備した展示設備の内容を更新し,海外からの観光客のために
外国語の説明をつけます。
また,ARなどの新しい情報技術を取り入れた展示に更新します。
工事の進捗状況
工事の最新状況はこちらで見られます→【重要文化財 旧函館区公会堂】保存修理工事について(市ホームページ)
◆解体工事(平成30年度~令和元年度(2018-2019))
床板の解体(本館1階)
床板・壁板の解体(附属棟)
傷んだ柱材(本館2階)
調査の結果,雨や風の影響で壁や柱の内部まで傷んでいる箇所が多く見つかりました。
◆構造補強工事(令和元年度~(2019-))
小屋裏の補強(本館)
壁の補強(本館2階)
床下基礎の補強(附属棟)
◆組み上げ工事(令和2年度~(2020-))
傷んだ柱材の交換(本館2階)
窓枠の補修(本館2階)
外壁の塗り直し(本館)
解体工事の時の調査結果を踏まえて,傷んだ部分は補修をし,再使用できないくらい傷んだ部分は新しいものに交換します。
また,外壁を修理前と同じ青灰色と黄色に塗り直します。
パンフレット
このページは現場見学会の参加者に配布するパンフレットを元に作成しています。
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