公開日 2023年08月07日
更新日 2024年08月08日
【基本的考え方】
函館市は,海や山,温泉などに恵まれた自然環境にあるとともに,気候的にも,寒冷地にありながら比較的降雪量の少ない地域であり,そうした自然特性から得られる再生可能エネルギーを有効活用すべく,これまでも,公共施設における再生可能エネルギー設備の整備,また,函館市の地域特性を活かした自然エネルギーへの取り組み,さらには,民間事業者による再生可能エネルギー事業の後押しなど,さまざまな形で積極的に取り組んできました。 北海道全体でも,太陽光・風力・地熱・農林畜産系バイオマスなど,多様な自然エネルギー源が存在しており,その賦存量は全国でもトップクラスである一方で,その活用には,送電設備などのインフラ整備や,安定した電源として活用するための技術開発などの課題があります。 このような課題を抱えるなか,再生可能エネルギーの導入を拡大していくためには,北海道全体としての取り組みが不可欠であり,函館市としては,国のエネルギー政策や産業政策の動向を注視しながら,北海道との一体的な取り組みのもと,引き続き,個々具体の事例に対応し,その導入拡大を図っていきます。 |
公共施設への積極的導入
函館市では,これまで公共施設の新設や改修などに合わせて再生可能エネルギー設備を設置してきましたが,今後とも導入可能性を調査・検討し,導入を図っていきます。
(1) 太陽光発電
函館市では,下記の公共施設で太陽光発電システムを設置しています。
発電した電気は施設内で使い,余った分は電力会社へ売っています。
また,市営の「新湊太陽光発電所」(株式会社ジャックス様寄贈)で発電事業をおこなっています。
発電場所 | 出力(kW) | 開始 | 用途 |
あさひ小学校 | 0.5 | 平成14年(2002年) 4月 | 自己消費のみ |
総合保健センター | 3.36 | 平成15年(2003年) 4月 | 自己消費のみ |
はこだて幼稚園・千歳図書館 | 10.0 | 平成15年(2003年) 4月 | 余剰分を売電 |
赤川児童館 | 3.0 | 平成16年(2004年) 4月 | 余剰分を売電 |
桔梗福祉交流センター | 3.21 | 平成17年(2005年) 4月 | 余剰分を売電 |
中央図書館 | 30.0 | 平成17年(2005年)12月 | 自己消費のみ |
昭和小学校 | 0.15 | 平成18年(2006年) 7月 | 自己消費のみ |
亀田港児童館 | 3.0 | 平成19年(2007年) 4月 | 余剰分を売電 |
弥生小学校 | 0.45 | 平成24年(2012年) 1月 | 自己消費のみ |
神山児童館 | 3.0 | 平成24年(2012年) 4月 | 余剰分を売電 |
北消防署 末広出張所 | 1.8 | 平成25年(2013年) 4月 | 自己消費のみ |
東消防署 南茅部支署 | 3.0 | 平成26年(2014年) 4月 | 自己消費のみ |
新湊太陽光発電所 | 83.16 | 平成26年(2014年) 7月 | 全て売電 |
東消防署 日ノ浜出張所 | 3.75 | 平成27年(2015年) 4月 | 自己消費のみ |
戸井西部総合センター | 5.3 | 平成28年(2016年) 4月 | 余剰分を売電 |
亀田交流プラザ | 9.4 | 令和 2年(2020年) 4月 | 自己消費のみ |
梁川公園内交通公園施設 | 7.0 | 令和 6年(2024年) 4月 | 余剰分を売電 |
総合保健センター(屋上) | 戸井西部総合センター | 新湊太陽光発電所 | 亀田交流プラザ |
(2) バイオマス発電
南部下水終末処理場では,家庭や工場などから流される下水を処理しています。
下水処理の過程で汚泥が発生し,汚泥の処理過程で消化ガス(可燃性のバイオガス)が発生します。
消化ガスは,ガス発電エンジンやガスボイラーの燃料として活用しています。
発電した電気は処理場内で利用し,ボイラーからの蒸気は,汚泥を乾燥する熱源に活用しています。
また,ガス発電に使用するガスエンジンから発生した熱を回収し,汚泥を処理する熱源に活用しています。
発電場所 | 出力(kW) | 開始 | 用途 |
南部下水終末処理場 | 500 | 平成元年(1989年) | 自己消費のみ |
消化ガス発電装置(ガスエンジン) |
(3) 廃棄物発電
環境部日乃出清掃工場では,ごみを燃やした熱を利用して発電をしています。
発電した電気は工場内で使い,余った分は電力会社へ売っています。
ごみを燃やして出る熱は,ボイラーの燃料として利用します。
ボイラーで発生させた蒸気は蒸気タービンへ送り,ここで電気をつくります。
また,復水熱を利用したお湯を,工場内のロードヒーティングと,南部下水終末処理場の消化タンクの加温に使っています。
そのほか,蒸気を熱交換器へ送ってお湯をつくり,工場内の暖房・給湯や,日乃出いこいの家(市営公衆浴場)で利用しています。
発電場所 | 出力(kW) | 開始 | 用途 |
日乃出清掃工場 | 1,660 | 平成 4年(1992年) | 余剰分を売電 |
蒸気タービン | 熱交換器 |
(4) 小水力発電
赤川高区浄水場水力発電所では,新中野ダムから赤川高区浄水場までの高低差(約100m)で生じる水圧を利用して発電し,全量を電力会社に売っています。
発電場所 | 出力(kW) | 開始 | 用途 |
赤川高区浄水場水力発電所 | 199 | 平成28年(2016年)10月 | 全て売電 |
水力発電所 | 水力発電設備 |
(5) コージェネレーションシステム
コージェネレーションシステムとは,2つのエネルギーを同時に生産し供給するしくみです。
現在主流となっているのは「熱電併給システム」と呼ばれるもので,発電装置を使って電気をつくり,発電時に排出される熱を回収して,給湯や暖房などに利用します。
市立函館病院と函館市旧イギリス領事館では,このシステムを導入し,天然ガスから取り出した水素を用いて発電を行うと同時に,発電時に排出される熱を回収して給湯や暖房に使用しています。
発電場所 | 出力(kW) | 開始 | 用途 |
市立函館病院 | 1,690 | 平成12年(2000年)10月 | 自己消費のみ |
函館市旧イギリス領事館(開港記念会館) | 0.7 | 令和 3年(2021年) 5月 | 自己消費のみ |
≪導入効果≫
公共施設に設置した太陽光発電システムや南部下水処理場でのバイオマス発電設備,環境部清掃工場での廃棄物発電設備,浄水場水揚水力発電所での小水力発電,函館病院と旧イギリス領事館のコージェネレーションシステムから発電された総電力量は,令和5年度実績で1,918万kWh超となっています。
1世帯当たりの年間使用電力量(4,602kWh:太陽光発電協会 表示ガイドライン(2024年度))に換算すると,函館市の施設からは,年間4,167世帯分に相当するクリーンエネルギーを生み出しています。
推進を図るための施策・支援等
函館市では,新エネルギーの導入を推し進めるため,普及啓発活動をはじめ,市独自の補助制度の創設や,民間の太陽光発電事業者に対する遊休市有地の貸し付けを行ってきたほか,民間事業者が行う地熱発電調査事業に対して連絡調整などの支援を行っています。
(1) 普及啓発活動
平成27年(2015年)2月には,「海洋エネルギー利用開発の現状と可能性」と題してシンポジウムを開催したほか,平成29年(2017年)10月17日には,函館市民会館で独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による「地熱シンポジウム」が開催されました。
函館市も当日は再生可能エネルギーに関するブースを出展し,パネルの展示や住宅用太陽光発電システム設置費補助金のパンフレットの配布などを行ないました。
また,出前講座にて,小学生向けに再生可能エネルギー(太陽光)について講座を行っております。
(2) 新エネルギー等システム設置費補助金
「新エネルギー等システム設置費補助金」は,新たに新エネルギー等システムを設置する方を対象に,設置費用の一部を補助する制度です。
平成23年度から令和元年度までは,太陽光パネルを設置する個人の方が対象でしたが,令和2年度からは,対象設備に定置用リチウムイオン蓄電池と家庭用燃料電池(エネファーム)を追加し,中小企業・小規模事業者等も対象としました。
また,令和3年度にガスエンジンコージェネレーションシステム(コレモ)を,令和4年度には電気自動車等を対象設備に追加しました。
こうした補助金の制度拡充により,函館市内の設置件数の増加や,さらなる市民意識の醸成を図ります。
関連リンク
≪電気自動車(EV)充電スタンド情報≫
EV充電スタンドの情報は、以下の電気自動車(EV)またはプラグインハイブリッド自動車(PHEV)ユーザー向け普通・急速充電器検索サイトなどでご確認ください。
(3) 遊休市有地における 民間事業者による太陽光発電事業
遊休市有地での民間事業者による太陽光発電事業については,下記の市有地で事業が行われています。
発電場所 |
出力(kW) | 事業者 | 開始 |
旧小学校用地 (高岱町) |
818.18 | 日商興産(株) | 平成25年(2013年) 9月 |
共働宿泊所隣接地 (新湊町) |
83.16 | ジャックス・トータル・サービス(株) | 平成26年(2014年) 7月 |
旧高等学校用地 (女那川町) |
513.5 | (株)テーケーワイ | 平成28年(2016年) 4月 |
旧小学校用地 (釜谷町) |
300 | (株)サンフード | 平成28年(2016年) 7月 |
旧小学校用地 (志海苔町) |
642.6 | (株)MIRARTHエナジーソリューションズ | 平成30年(2018年)12月 |
(4) 民間事業者による地熱発電調査事業
南茅部地区では,オリックス(株)が令和6年(2024年)5月から南茅部地熱発電所の商業運転を開始したほか,恵山地区で民間事業者による調査が行われており,事業化が期待されています。
新エネルギー関連産業の育成
大学や試験研究機関との連携のもとに,地域の特性や実態に応じた新エネルギー技術の開発を促進し,新エネルギー産業の育成振興や地域企業のエネルギー関連産業分野への進出を促進します。
(1) 潮流発電
函館市は,流れが速い津軽海峡に面していることから,その潜在性を活かした「潮流海流発電」の可能性を検討するため,平成25年(2013年)に津軽海峡の流速測定調査(海洋エネルギー・ポテンシャル基礎調査)を実施しました。
潮流海流発電の分野は,まだ全国的にも研究開発レベルですが,学術機関や関連企業などの実用化に向けた取り組みについて,情報収集を行っています。
基礎調査の概要表示リンクはこちら
(2) 水素エネルギー
商船三井テクノトレードが発起人となり,函館市・北洋銀行がサポートする「Nord SeaEraプロジェクト」において,地産地消の新たなエネルギー需給関係モデル構築を目指し,実証・実装に向けた検討を行っています。
津軽海峡特有の海洋・海上エネルギー(太陽光・風力・波力・潮力などのあらゆる機能の活用を目指す)を由来とする船上水素製造輸送と,需要面において函館市における水素エネルギーへの転換・利活用を同時に検討することによって,2027年度を目途とした地産地消型水素サプライチェーンの構築を目指しています。
また,水素供給者と需要家が相互にコミュニケーションをとりながら独自のマーケットを確立し,安定的な水素利活用を推進していくための環境づくりについても,検討しています。
※注目を集める水素エネルギー |
水素は,最も軽く,また宇宙で最も豊富にある元素とされ,水や化合物として地球上 |
(3) 北海道との連携
現在,北海道では,2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボン北海道」の実現を目指すことを表明し,化石燃料等のエネルギーの利用をできる限り減らし,道内に豊富に賦存するエネルギー資源である太陽光,風力,水力,地熱,バイオマスなどを活用していくこととしています。
既に道内の一部の自治体では,当該自治体内に賦存するエネルギー資源を活用し,各自治体内で消費する「エネルギーの地産地消」の取組に産業を結び付け,供給側と需要側が連携した域内循環による経済の活性化や暮らしの豊かさを生み出す取組が進められています。
また,新エネルギーを活用した発電設備や,エネルギーの貯蔵・融通を行うことも可能な蓄電池や電気自動車等の分散型エネルギーリソースを効果的に組み合わせ,地域単位でエネルギー需給を管理する「受給一体型の分散型エネルギーシステム」の構築促進を通して,2018年の北海道胆振東部地震に伴うブラックアウト(大停電)を教訓とした,災害時も含めた電力の安定供給の確保に資する地域マイクログリッド(非常時に地域内の再生可能エネルギー電源の電力等を自律的に供給可能な送電線網)の構築を促進することとしています。
本市においても,北海道と一体的な取組を通じ,ゼロカーボンシティの実現を目指してまいります。
再生可能エネルギー関連団体ホームページリンク
経済産業省 資源エネルギー庁 |
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一般社団法人 太陽光発電協会 |
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一般社団法人 日本風力発電協会 |
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日本地熱協会 |
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国立研究開発法人 |
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独立行政法人 |
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