公開日 2026年02月17日
民生常任委員会行政調査
令和7年11月4日火曜日から11月6日木曜日
11月4日 青森県八戸市調査

<所見>
(1)調査の概要
ア 目的
函館市が直面する救急需要の増大と複雑化に対し、現状では対応できない段階にある。道南ドクターヘリは広域救急の要であるが、夜間や悪天候時(特に夏季の海霧)には出動できず、救命機会の損失という深刻なリスクを内包している。この危機的状況を打破する抜本的な解決策として、ドクターヘリとドクターカーを連携運用する「二刀流戦略」が、その解決策ではないかと考える。
イ 本市の課題
・道南ドクターヘリの運用体制は存在するものの、地上搬送との連携が不十分であり、圏域全体での包括的な救急医療ネットワークが未構築である点。
・夜間や悪天候時にドクターヘリが担えない救急事案に対し、医師を迅速に現場投入する代替手段がなく、救命の機会損失リスクを抱えている点。
ウ 調査のポイント
・八戸市におけるドクターヘリ及びドクターカーの具体的な運用実態。
・隣接県を含む広域連携の具体的な状況と、その成功要因の分析。
(2)八戸市の救急医療体制の現状と分析
ア 八戸市及び八戸市立市民病院の概況
同院は青森県南東部から岩手県北部にまで及ぶ広大な医療圏における唯一の三次医療機関として機能する一方、ドクターカー事業の運営と財政は、八戸市を中心とする8市町村で構成される「八戸圏域連携中枢都市圏事業(スクラム8)」によって支えられている。この広域医療提供と、圏域自治体による共同運営という二重の構造が、先進的な救急システムの根幹をなしている。
八戸市の救急医療は、単一自治体で完結するのではなく、広域的な自治体間連携を大前提として構築されている。この広域性を効果的にカバーする空の手段として、ドクターヘリが重要な役割を果たしている。
イ ドクターヘリの運用体制と広域連携の評価
青森県のドクターヘリは、広大な県土、特に山間部や半島地域における救命率向上に不可欠な救急医療として機能している。平成21年の運航開始以来、八戸市立市民病院はその基地病院として、県内のみならず北東北全体の救急医療ネットワークにおいて中心的な役割を担ってきた。
八戸のドクターヘリ運用は広域連携において目覚ましい成果を上げているが、天候不良による運航不能という根本的な課題を抱えている。この空からのアプローチの限界を補い、より緻密な救急医療ネットワークを完成させる地上部隊として、ドクターカーが決定的な役割を果たしている。
ウ ドクターカーの運用体制と革新的取組の分析
八戸市の救急医療体制の核心は、ドクターヘリを補完し、都市部や近距離事案において圧倒的な機動力を発揮するドクターカーの戦略的運用にある。それは単に医師を現場に派遣する車両ではなく、自治体連携、消防との一体化、大学との技術協力という複合的なシステムとして機能しており、函館市が導入を検討する上で極めて重要な示唆を与える。
八戸市のドクターカーは、単なる一台の車両ではない。その成功は、①ドクターヘリとの柔軟な補完関係という運用モデル、②広域自治体連携による持続可能な財政基盤、③消防との完全なシステム統合という「三位一体」の連携システムによってもたらされたものであり、地域全体で救命率を向上させる救命救急システムである。
(3)函館市の救急医療体制への示唆と導入に向けた考察
ア 八戸市モデルから得られる教訓と函館市への応用可能性
本調査の核心は、八戸市の先進事例が函館市の救急医療体制に与える具体的な示唆を明らかにすることにある。八戸市モデルを単に模倣するのではなく、函館市および道南地域の特性に合わせて応用する視点が不可欠である。
・ドクターヘリとの補完関係の確立
道南ドクターヘリが運航できない夜間や、特に夏季に多発する海霧などの悪天候時に、ドクターカーは救急医療の空白を埋める極めて有効な手段となる。空からのアプローチが絶たれた際の地上部隊として、重症患者への早期医療介入を実現する。
・都市部・近距離事案への迅速対応
函館市内および近郊で発生する救急事案に対しては、ドクターヘリよりもドクターカーの方が迅速かつ効率的な医師の現場投入を実現する。これにより、脳梗塞や心筋梗塞など、一刻を争う疾患における救命率の向上が期待される。
・財政規律と運用効率を両立する「ラピッドカー方式」
八戸市が採用する「ラピッドカー方式」は、導入コストを大幅に抑制しつつ高い機動性を確保できる、財政的に賢明かつ運用上優れたモデルである。財政的制約の中で新規事業を検討する函館市にとって、これは最も現実的かつ効果的な選択肢と評価できる。
八戸市モデルは函館市にとって多くの利点をもたらす可能性を秘めているが、その導入は決して容易ではない。成功のためには、次に挙げる複数の現実的な課題を克服する必要がある。
イ 導入における課題と求められる体制構築
函館市が八戸市のドクターカーモデルを導入するにあたり、重要と考えられる課題4点。
①財源の確保:広域連携による共同投資モデルの構築
年間1,000万円超の赤字を圏域自治体の共同負担で補う八戸市のモデルを函館市で導入するにあたっては、八戸市の「連携中枢都市圏事業」を青写真とし、道南の周辺自治体との正式な費用分担協定を確立することが必要と考える。
②広域連携の枠組み構築:政治的リーダーシップの発揮
ドクターカー事業の成否は、技術や車両以前に、広域連携の政治的枠組みを構築できるかにかかっている。函館市がリーダーシップを発揮し、北斗市、七飯町をはじめとする道南の周辺自治体を巻き込み、圏域全体の救急医療への共同投資として事業を位置づける政治合意の形成が不可欠である。
③消防との連携深化:「覚知同時要請」の実現
八戸市が実現した秒単位の迅速性は、函館市消防本部とのシステムレベルでの統合なくしては達成できない。指令システムや通信体制の共有、あるいは連携プロトコルの策定に向けた具体的な協議を速やかに開始し、「覚知同時要請」体制の構築が必要であること。
④人材確保と育成:院内救命士の戦略的活用
ドクターカーに乗務する医師、看護師の確保に加え、八戸市が専門的なドライバー兼医療アシスタントとして活用する「院内救命士」は、函館市における人材不足を克服するための具体的なモデルとなる。緊急走行訓練を含む実践的な育成体制の構築が急務である。
(4)総括
八戸市の先進事例は、ドクターカーが単なる「医師を運ぶ車」ではなく、「地域全体で救命率を向上させるための連携システム」であることを明確に証明した。その成功は、一つの病院の努力のみならず、自治体、消防、大学といった地域社会の多様な主体が一体となって築き上げた成果であり、本市及び道南地域がこのモデルから学び、実践すべき点は極めて多い。
・八戸市モデルの核心
八戸市の成功は、①ドクターヘリとドクターカーの補完的運用(二刀流)、それを支える②広域自治体連携による財政支援、そして③消防との一体的運用、この三位一体のシステムにある。これらが有機的に連携することで、他の追随を許さない迅速かつ質の高い病院前救急診療を実現している。
・函館市への導入意義
ドクターカーの導入は、道南ドクターヘリが抱える夜間・悪天候時の運用限界という弱点を補い、特に都市部・近距離事案における救命率を向上させる極めて高いポテンシャルを有する。これは、道南地域全体の救急医療の質を一段階引き上げるための戦略的投資となり得る。
・導入に向けたポイント
導入の成否は、技術や人材以前に、道南の周辺自治体との広域連携による財政・運用体制を構築できるかという一点にかかっている。八戸市が「連携中枢都市圏事業」という枠組みを活用したように、本市がリーダーシップを発揮し、道南地域全体で「命を守る」という共通目標のもと、持続可能な協力体制を築くことが実現に向けた課題と考える。
函館市、道南各市町、函館市消防本部および関係医療機関から構成される「道南ドクターカー導入検討協議会(仮称)」を設置。本協議会を、財源確保、広域連携の枠組み、消防とのシステム統合といった具体的課題を解決するための公式なプラットフォームとし、道南地域における新たな救急医療体制の実現に向かうことが、道南の地域医療に対して重要な一歩となると考える。

■ドクターカーは現在3台
1号 トヨタ RAV-4
2号 スズキ ESCUDO(写真)
V3 日産 エルグランド(移動型緊急手術室)

■ドクターヘリユーロコプターEC135 6人乗り(通常は、操縦士、整備士、医師、看護師、患者、家族)
11月5日 宮城県調査

<所見>
(1)宮城県緊急医療体制の現状について
ア 令和5年救急出動件数130,226件(全国7,638,558件)
イ 令和5年救急搬送人員112,950人(全国6,641,420人)
ウ 救急専門医は令和4年時点で71人(10万人当たり3.1人で全国平均の4人を下回る)
エ 仙台市に医療機関が集中しており、仙台医療圏の北部及び南部では救急医療機関が少なく、これらの地域から仙台市内の救急医療機関への搬送が多い状況である。
オ 高齢化の進行に伴い救急搬送件数は年々増加傾向にある。
カ 県では、小児救急輪番を実施している市町村への補助を行っている。
キ 救命救急センター(大崎市民病院、みやぎ県南中核病院、石巻赤十字病院)の運営費補助を実施している。
(2)救急医療体制を維持・向上するための取組について
【ドクターヘリ】
ア 平成28年10月より1機を運用。
イ 国庫補助を活用した運航経費の補助に加えて、必要な資機材の整備及びフライトドクター・ナース育成に係る県独自の補助を実施している。
ウ 基地病院は仙台医療センター及び東北大学病院で県内全域を対象とする。
エ 令和6年度出動回数は265件(要請回数は316件)
【ドクターカー】
ア 病院それぞれがドクターカー1台を運用し活動している。
イ 仙台市立病院(消防救急車型)では、仙台市消防局の高度処置隊を配置し、消防と連携し運用している。(令和5年度実績707件)
石巻赤十字病院(病院救急車型)では病院内で運用し、救急隊の要請を受けた際に現場で合流する体制で、平日8時から17時まで稼働している。(令和5年度実績163件)救急隊は医師接触までの所要時間を勘案しドクターヘリとドクターカーを使い分けている。
ウ ドクターカーは、各医療機関及び消防本部にて、対応力向上に努めている。
【その他】
東北大学病院高度救命救急センターを中心とする人材育成機能を活用した救急科専門医の養成を行っている。
【隣県との連携】
ドクターヘリに関して隣県(岩手・山形・福島)との間で相互応援協定を締結し、県境地域において相互に出動可能な体制を構築している。
(3)災害時におけるドクターヘリ及びドクターカーの活用について
大規模災害時には搬送手段として活用する想定をしている。また、今年9月に実施した政府訓練においてドクターヘリ本部の運用訓練を実施するなど災害対応力の向上に努めている。
(4)救急医療の課題について
救急搬送の長時間化が特に課題であり、消防本部への救急アプリの導入などを検討している。
救急医療人材や救急病床の確保などが大きな課題であり、引き続き人材確保・育成の取組を進めるとともに、医療圏内での救急病院の役割を明確化し、転院搬送調整の円滑化を図る必要があると認識している。加えて、救急電話相談(♯7119、♯8000)認知率が約3割にとどまり認知度向上と救急医療の適正利用を推進していく必要がある。
(5)まとめ
この度の調査で、救急医療の課題が山積している中、エリアの問題から医療施設の問題、地域的な地形的課題、そして一番重要であって避けて通れない少子高齢化に伴う人材不足という大きな課題など、救急医療の苦悩と環境の厳しさを目の前で感じた。
宮城県ではドクターヘリを活用しており、基地病院からドクターヘリが出動すると、学校グラウンドや公園、河川敷の広い敷地を活用したランデブーポイントで救急車と合流し救急医療に対応している。
ドクターカーは各病院が個別に導入して運用しており、都市部においては、小回りの利くドクターカーのニーズが高い。
ドクターヘリもドクターカーも早期に治療を行えることから、今後ドクターヘリやドクターカーを増やすなど一層活用し、様々な課題などをクリアして、函館市の救急医療体制を確保することが重要だと改めて強く感じた。
また、函館市と同様に宮城県においても高齢化が進み、高齢者の搬送件数が多い状況であった。今後ますます高齢化が進む中、救急医療体制を確保すること、特に早期の人材育成が急務であると考える。
市民がもっと命の尊さを理解し、函館市民一人ひとりが安心して生活できるまちになることを願う。
11月6日 青森県調査

<所見>
(1)青森県の救急医療体制について
青森県の救急医療体制は、青森地域、津軽地域、八戸地域、上十三地域、西北五地域、下北地域の6圏域ごとに取り組まれている。
(2)青森県の救急の出動件数や搬送人員の推移について
令和5年度の救急出動件数が6万件を初めて突破し搬送人員も5万4,600人台と非常に高い水準。搬送人員の内訳は、高齢化の進行により高齢者が全体の3分の2を占めていることが特徴。
(3)救急医療に関する医師数や看護師数などの指標について
救急医療の指標は5つで、救命救急センター3か所に関しては、救急専任医師数は全国平均12人より若干多い16人、救急担当専任看護師数は全国平均64人より若干少ない59人。
救急車を呼んでから医療機関に収容するまでの時間は43.3分で全国平均は45.6分。
救急の出動件数に占める軽症者の割合をなるべく低くする取組を実施。結果、全国平均48.5%に対し青森県42.9%と軽症者の割合が低い。また、重症以上の傷病者において4回以上の医療機関のたらい回しのような事例は全国平均6.3%よりかなり低い割合0.9%である。
(4)救急医療の主な課題について
ア 救急出動件数が増加傾向であること。軽症者の割合は減少したが、医療機関の適正受診や救急車の適正利用を促すことが必要。
イ 救急医療機関の減少。救急告示医療機関、病院群輪番制参加病院とも減少傾向であること。病院経営問題や担い手不足などで開業医が減少し、24時間365日対応による人員体制の確保や設備を整えるなど、維持し続けることが難しい状況。
ウ 医師不足。青森県は医師数が充分でないため、休日・夜間も含む救急診療に対する医師の確保が難しい医療機関が多いことが課題である。
(5)救急医療の課題に対する取組について
モバイルICTを活用した救急医療情報共有体制の整備の導入に対し県として補助を行っている。救急車から搬送先病院に患者情報が転送され、搬送先ですぐ必要な処置ができ時間短縮などの効果が期待され県内に広めて行く。
2つ目は病院救急車の活用、ドクターカーを利用し、二次救急・三次救急を担う高次の救急医療機関が治療により回復した患者を、回復期への医療機関に転院搬送する。
県は、ドクターカーの購入や運転手への人件費の補助を今年度より実施。
(6)青森県ドクターヘリ運航状況について
・傷病者救命と後遺症の軽減等に果たす役割の重要性が大きくなっている。
・運航効果として、医師が搭乗し現場に駆けつけるので初期治療開始までの時間が短い。距離の影響がほとんど見られず、早期に治療できる。
・県が事業主、県から委託先(中日本航空株式会社)に運航、機体整備、機長、運航調整を行う通信センターなどをお願いしている。
・平成21年(2009年)八戸市立市民病院に1機目配備、平成23年(2011年)2か月交代で青森県立中央病院と八戸市立市民病院と共同分担運航を実施。津軽地域の要請の増加により、青森県立中央病院に2機目を配備。
・運航範囲の分担は消防機関ごと第一要請先が決まっているが、天候不良などの場合は、地域を超えて第二要請先で対応。
・ドクターヘリ要請基準を消防機関で判断して出動要請をする。
・令和7年3月に大規模災害時の具体的運用規定を明確化。災害対策本部から基地病院に災害対応が優先指示され、不足時は青森県、秋田県、岩手県の3地域に対して八戸市立市民病院からヘリの要請など行う。
・北東北広域連携を平成26年(2014年)10月に3県知事協定し、本格実施。青森県立中央病院、八戸市立市民病院、秋田赤十字病院、岩手医科大学病院から概ね100㎞以内を出動対象地域として連携し役割分担を行っている。青森県から岩手県への出動件数が多い。
(7)まとめ
救急医療提供に関する指標に添って、全国と比較しながら、救急体制の充実と強化の構築を実践していることに感心しました。特に救命救急センターにおける専任の医師や看護師などの人材育成に修学資金を出していることは未来が見えます。
青森県の救急医療の課題では、軽症者の出動件数の増加、開業医減少による救急当番医の不足、医師不足など挙げられています。課題の取組として、二次救急、三次救急の病床を確保するため、病院救急車への整備や運転手の人件費等の経費補助を行い回復期の患者の転院を促進しているなど地域医療の連携と役割分担が明確化していることです。
ドクターヘリ・ドクターカーの活用も消防との連携、隣県との連携、災害発生時の体制が構築されていて、初期治療開始までの所要時間が短いほど後遺症も少なく救命につながることを改めて認識しました。函館市でのドクターカー活用については、医師不足が最大の課題と思われます。

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