Language

目的
から探す

注意情報
ヘッドライン
緊急情報
ヘッドライン

令和6年度 経済建設常任委員会行政調査

公開日 2025年01月16日

更新日 2025年01月16日

経済建設常任委員会行政調査

令和6年11月5日火曜日から11月7日木曜日

 

11月6日 長崎市調査

長崎市調査の様子

<所見>

 経済建設常任委員会は「これからの空き家対策について」をテーマとして、長崎県長崎市における「空き家の現状について」、「空き家対策の取り組みについて」、「今後の課題について」の行政調査を行った。

(1)はじめに
 長崎市は、1889年(明治22年)4月1日市制施行により、長崎区の全域及び上長崎村・下長崎村の各一部の区域をもって長崎市が発足し今日に至っている。
 地勢は、東西約42キロメートル、南北約46キロメートルのまちの中心部に、南方から北方へ向かい約4キロメートルにわたって湾入した天然の良港に恵まれているが、周囲を300~500mの山々によって囲まれ、丘陵地帯に限られた部分が市街地となり、丘陵と山が海岸線に迫っているため平地に乏しく、傾斜地を利用して山頂に向かって家屋が建ち並ぶという特異な市街地が形成されている。
 人口は、39万2,685人(令和6年1月)で、函館市の約1.2倍の規模であり、面積は約405.69平方キロメートルで、函館市の約60%である。
 産業面を見ると、工業、造船業では三菱重工業長崎造船所、三菱電機などの工場が集中し、観光業では、鎖国時代から港が海外に開かれていたことから、異国情緒のある街として知られている。
 水産業では、長崎漁港は捕鯨や東シナ海を漁場とする「以西底引き網」の基地として繁栄し、長崎漁港以外にも多くの漁港を有している。
 鎖国体制であった江戸時代には、国内唯一の江戸幕府公認の国際貿易港である出島を持つ港町であり長崎貿易で栄え、幕末期も長崎港は日米修好通商条約の開港場に指定されたため、出島跡を初めとして旧居留地や長崎新地中華街など、同じく港町の横浜市や神戸市と同様に異国情緒に満ちた港町として有名である。
 また、三菱重工業発祥の地である同社の長崎造船所や、かつて石炭産業が栄えた軍艦島(端島)など、日本産業の近代化を支えた港湾都市であった。
 三菱重工業長崎造船所の一部や軍艦島などは2015年に「明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一部として世界文化遺産に登録されている。

(2)長崎市の空き家対策
①空き家の現状
・空き家の件数33,900件(平成30年度当初の住宅・土地統計調査結果)
・管理不全空き家の件数12件(令和6年3月末)
・特定空家等の数850件(令和6年3月末)
②空き家となる要因
・所有者不明や死亡による相続権利の複雑化
・建物の所有者や相続人が自己所有する建築物について管理義務意識が低いことにより、危険な空き家が放置されている。
・所有者等の解体費用の経済的負担が大きいことが要因と思われる。
③長崎市の空き家の特徴
 急速に市街化が進んだ時期にその地形上車が入らない斜面地に密集して建物が建てられ、長年経過して現在に至って使われなくなり空き家になっている。
④空き家対策の取組について
 長崎市空家等対策計画というのを作って特に基本方針としまして、特定空家等にしないということと特定空家等をなくす空き家対策に取り組んでいる。
・利活用の取組
 空き家・空き地情報バンクを設け、長崎市内の空家等の情報をホームページで公開し、長崎市に移住を希望する市外在住者、長崎市内で転居を検討している市民へ紹介する制度となっている。
・除却の取組
 長崎市特定空家等除却費補助金ということで、長年放置され老朽化し、危険である、若しくは危険となる恐れがある特定空家等の除却に要する経費の一部を助成し、安心・安全な住環境づくりを推進することを目的としている。
 これまで280件を除却しており、今年度も55件を補助金により除却する予定。
・長崎市老朽危険空き家対策事業
 市民の安全と安心を確保するため、長年にわたって使用されず、適正に管理されていない老朽危険空き家のうち、所有者がその建物及び土地を本市に寄附できる等の条件を満たすものを除却し、跡地を整備することで、住環境整備等の推進に資することを目的としている。(除却実績54件)
・老朽危険空家等を除却した土地に係る固定資産税の減免制度
 固定資産税の住宅用地特例が外れた老朽危険空き家を除却した場合に、その土地に係る固定資産税が増額となった差額分の固定資産税を3年間減免する仕組み。
 税部門としての観点から何か空き家対策ができないかと考え、条例を制定し令和5年度課税分から制度開始している。
 利用実績は2件だが、住宅用地特例解除のお知らせとともに制度の説明をしたところ、所有者や相続人間で空き家について再度協議を始められたという声もあり、空き家解消の第一歩となったとのこと。
・その他の取組
 耐震化補助事業で除却についても行っており、また、住宅支援制度としてパンフレットを作成し公表して使用している。
 他部局や関係団体との連携で、「長崎市の空き家対策について」、「相続登記の義務化」などの説明会及び相談会を、長崎市、法務局、司法書士会と連携して開催している。
 今後の課題は、空き家が長期になると権利が複雑化するということで、早めの除却を進める必要がある。次に、人口減少により、空き家は増加するため、空き家相談等への対応を強化する必要がある。

(3)最後に
 本来、空家等はその所有者等又は占有者が適正な維持管理に努めなければならないが、所有者不明や経済的問題等の要因により長年放置され老朽化し、倒壊などの危険性が増した空家等の増加は、函館市においても喫緊の課題となっているため、長崎市における空き家対策を参考に下記の対応が必要である。
・空き家を住宅だけでなく、様々な形態での利活用を進める。
・空き家に関する啓発活動を行い、所有者等に自主管理を促す。
・建て替えが進むような環境整備。
・所有者等に対し、空き家になる前に家(住まい)をどうするか等を子や孫等の次の世代に伝えることを促す。
・今後も空き家(空き地を含む)は増加するので、相談等への対応を強化する。
・年数が経過すると空き家の老朽化が進むことに加え、権利関係も複雑化する恐れがあるため、早めの除却を進める。
・早期の除却を進めるためには、空き家の所有者が除却をした方が良い(お得だ)と思ってもらえるような取組を進める。

 


11月7日 北九州市調査

北九州市調査の様子

<所見>

 経済建設常任委員会は調査事件である「これからの空き家対策について」の参考とするため、福岡県北九州市「北九州市役所」を訪問し、空き家活用とリノベーションまちづくりの担当者から、北九州市における取り組みの内容や効果・実績を伺い、その後、意見交換を行った。

(1)北九州市の概要
 北九州市は1963年に門司市、小倉市、若松市、八幡市、戸畑市の五市が対等合併し、九州初の百万都市、政令指定都市として誕生した。国連の調査団が訪れるほど、珍しい形で誕生した自治体である。五市はそれぞれ、陸上と海上運輸の集散地として栄えた九州の玄関口の門司市。城下町時代からの商業・行政などの集積地で広域的な拠点機能を担った小倉市。国内有数の炭鉱地帯・築豊で算出される石炭の積出港として栄えた若松市。産業革命に貢献した官営八幡製鐵所創業の地の八幡市。そして私立明治専門学校(現九州工業大学)が創設された戸畑市と、歴史や文化、祭り、食、暮らしなどの特色があり、それらは北九州市の個性として活き続け、現在は7つの行政区で構成されている。

(2)北九州市が抱える課題
 旧五市の合併後は九州最大の都市として日本の高度経済成長を支えてきたものの、その鈍化と山陽新幹線の博多駅延伸等を要因に全国トップレベルで人口増加が続く福岡市が躍進。さらに2008年のリーマンショックが大打撃となり、福岡県内の様々な企業や機能が北九州市から福岡市へと移行・統合する状況が相次いだ。
 そうした近年の人口減少や少子高齢化を背景に、空き家数も増加している。北九州市特有の事情としては、山が多い門司区に多いということで、高齢化率と空き家率は密接に関係しており、坂道の多い西部地区でその傾向が見られる函館市とも共通している。

(3)北九州市の空き家対策
 北九州市の取り組み内容の中で最も印象的なことは、まずは空き家に関して市民が日頃から興味や関心を持つよう啓発活動を行っているということだった。7つの全ての区役所に駆け込み相談窓口を設けていて、空き家の所有者の対応相談だけでなく、近隣の空き家で迷惑を被っている方からの情報も承っていることで、市内の空き家の現状把握にも繋がっている。空き家に関する出前講演やセミナーの開催、固定資産税の納税通知書に啓発チラシを同封、また我が家の終活ノートという名のもとに、エンディングノートの空き家版として残された家族に対して自分の思いを綴っておくということも、今の時点から将来の我が家に関して考えたり、後々その扱いの決断をする人たちにとって大きな要因であるため、良い取り組みであると感じた。
 除却の施策としては、老朽空き家等除却促進事業が大きく利活用されている。昭和56年以前の建造物で、居住を誘導する区域外で所有者自らが解体する場合、一棟あたり30万円を補助するというもので、これまで累計2,372件、1年あたり237件がこの制度を用いて除却されている。令和5年度までは一棟あたり50万円補助していたということであるが、市としては除却の件数を伸ばしたいため補助額を減額したとのことであった。補助額を減らすことで件数も減ってしまうのではないかという懸念もあり、そのあたりのジレンマを抱えながらの補助額変更であるとのことだが、今年度は300件を想定し9,000万円を予算計上のところ、12月現在、市のホームページでは予算枠が残り僅かという案内があり、今年度も市民から関心が高く多くの利用がされていることが分かる。空き家の所有者としては、除却を考えるきっかけとなるため非常に良い取り組みである。

(4)北九州市のリノベーションまちづくり
 リノベーションまちづくりは、現存する空き家や空き店舗を利活用して新たな風を生み出そうとするもので、他都市では都市整備的な意味合いが強いが、北九州市は産業振興に力点を置いて、小倉北区において、民間がビジネスの視点から主導的に活動した。
 2009年、商工会議所やまちづくり団体を対象として、都市再生プロデューサーの清水義次氏をお招きしての家守方式に関する講演が大きな起点となった。空き店舗が増えエリア価値が下がったことをプラスに捉え、小さなエリアに集中してリノベーションまちづくりを推し進めていこうとするもので、立ち上がったキーマンにより小倉家守構想がスタートし、それに関わるプレイヤーが積極的に活動しやすいように、行政はサポートに徹しているとのことであった。民間の目線や行動力が存分に発揮される体制整備に努めるというのは、理想的な立ち回りであると考える。

(5)まとめ
 空き家対策を行っていく上では、まずは徹底した実態調査が求められる。そして行政だけが意気込んでいても、市民や空き家の所有者の意識が醸成されなければ、持続的な除却に繋がらず、人口減少の影響が今後さらに進むことが予想されている中で、抱える空き家の件数は右肩上がりとなってしまう。年数が経過するにつれ、所有者の特定や連絡のやり取りが難しくなってしまうため、函館市においても空き家対策は待ったなしの状況であると改めて感じた。北九州市の取り組みに関して、函館市にも効果が発揮される施策が実施され良い方向へと繋げていきたい。

 

 

by
このページの本文とデータは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本ライセンスの下に提供されています。
  • 本ページに掲載しているデータは、自由に利用・改変できます。
  • 本ページに掲載しているデータを元に、2次著作物を自由に作成可能です。
  • 本ページのデータを元に作成したものに、データの出典(本市等のデータを利用している旨)を表示してください。
  • 本ページのデータを編集・加工して利用した場合は、データを元に作成したものに、編集・加工等を行ったことを表示してください。また、編集・加工した情報を、あたかも本市等が作成したかのような様態で公表・利用することは禁止します。
  • 本ページのデータを元に作成したものに、第三者が著作権等の権利を有しているものがある場合、利用者の責任で当該第三者から利用の承諾を得てください。

お問い合わせ

議会事務局 議事調査課
TEL:0138-21-3757