公開日 2024年02月22日
令和6年度教育行政執行方針
令和6年度の教育行政執行につきまして,函館市教育委員会の基本方針を申し述べます。
高度情報化・国際化の進展,個人の価値観やライフスタイルの多様化,急速な人口減少や少子・高齢化,地域社会におけるつながりや支え合いの希薄化など,社会情勢が大きく変化するなかで,市民一人ひとりが主体的に社会に関わり,多様な人々と連携・協働しながら,活力ある地域社会を創り出していくことが求められています。
こうしたことから,郷土の歴史や文化に誇りをもち,複雑化・多様化する課題と向き合い,地域の発展を支える人材の育成を担う教育の役割がますます重要となってきています。
教育委員会といたしましては,「函館市教育振興基本計画」に掲げる「自立」,「共生」,「創造」という理念のもと,「生涯を通じて学び続け,主体的に判断して変化する社会を生きる人」,「寛容さと思いやりの心をもって,多様な人々と絆を結び共に支え合う人」,「世界に目を向け,新たな価値を創り,まちの魅力を高める人」の育成をめざし,教育行政を推進してまいります。
以下,教育委員会として令和6年度に重点的に取り組む施策について,6点,申し述べます。
1 変化する社会を生きる力の育成
一点目は,「変化する社会を生きる力の育成」についてです。
子ども一人ひとりが,変化する社会のなかで主体的に生き抜くことができるよう,確かな学力,豊かな心,健やかな体を育むことが重要です。
このため,学校運営力の向上を図る各種人材を配置するなど,きめ細かな指導体制の整備を行うとともに,1人1台端末やICT機器の一層の活用により,「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を推進します。
小学校においては,少人数指導の充実や教科担任制の導入を推進するため,算数科および理科の非常勤講師を配置するほか,中学校においては,免許外指導の改善を図るための非常勤講師の配置を拡充します。
外国語教育につきましては,外国語指導助手や外国語活動サポーターの配置により,その充実を図ります。
中学校においては,個々の習熟の程度に応じた学習を充実するため,デジタルAIドリルを引き続き活用します。
また,情報モラルを含む情報活用能力の育成に努めるなど,児童生徒がより高度な情報化社会にも対応できるよう,学習活動の充実を図ります。
学校図書館につきましては,学校司書の活用や図書整備率の向上により,読書環境や読書活動のさらなる充実に努めます。
特別支援教育につきましては,学習面や生活面において教育上特別な配慮を要する児童生徒に対して支援を行う支援員や,学校に対して専門的な助言を行う巡回指導員を増員し,学校全体で適切な指導や必要な支援を行う体制を充実するとともに,通常の学級に在籍しながら障がいの特性に応じた支援を受けられる通級指導教室を設置し,児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育を行います。
いじめの対応につきましては,いじめはどの学校にも誰にでも起こり得るものとの認識に立ち,「函館市いじめ防止基本方針」に基づき,学校,家庭,地域,関係機関などと緊密に連携し,未然防止と早期発見,早期対応に組織的に取り組みます。
不登校の対応につきましては,文部科学省が示した,誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)を踏まえ,児童生徒一人ひとりの状態に応じた多様な支援を行います。
各学校においては,不登校児童生徒に適切な対応を行うために,中心的な役割を果たす教員をコーディネーターとして明確に位置付け,児童生徒が抱える諸問題の解決に向けて組織的に取り組みます。
また,登校はできても,所属教室に入ることができない生徒を対象に,学校独自の取り組みとして設置が広がり,利用も拡大している「校内サポートルーム」に不登校生徒支援非常勤講師を配置し,支援を行います。
さらに,昨年4月,南北海道教育センターに開設した「サポートベース函館」において,外出はできても登校ができない児童生徒の社会的自立に向けた支援を行うほか,フリースクールなどとの連携を推進します。
このほか,学校に登校できない児童生徒に対する学びの一形態として,ICTを活用した計画的な学習活動を行えるよう支援の充実を図り,教育機会を確保します。
このような複雑化・多様化する児童生徒一人ひとりの問題への対応を図るため,小学校のスクールカウンセラーの派遣回数を増やすほか,スクールソーシャルワーカーやこころの相談員の配置により,児童生徒や保護者等への支援・相談体制の一層の充実を図るとともに,教員やスクールカウンセラーなどの研修を実施し,資質・能力の向上を図ります。
小学校体育科における水泳学習につきましては,新たに民間プールも活用しながら,確実な実施に努めてまいります。
また,児童生徒一人ひとりが,自分を大切にするとともに,多様性を認め合い他者を尊重することができるよう,命を守る教育やがん教育,性に関する教育などに取り組みます。
日本語指導が必要な児童生徒につきましては,早期に学校生活に適応できるよう,基礎的な日本語の習得や授業の理解を支援します。
学校給食につきましては,物価高騰が続くなか,保護者の負担を増やすことなく,栄養バランスの良い給食を提供するため,給食食材購入費の支援を継続します。
また,「函館市学校給食基本方針」に基づき,より安全で安心な給食を提供するため,衛生管理をさらに徹底するとともに,郷土の食材や食文化への関心を高めるため,函館産や北海道産の農水産物の使用に努めるほか,計画的に学校給食設備の更新を進めます。
安全に関する教育の推進につきましては,地域や学校の実態に即した実効性のある危機管理マニュアルに基づき,災害や危機事象の発生時等に適切に対応できるよう備えるとともに,地震など危険発生時等に自ら正しく判断し,身を守る行動がとれるよう,児童生徒の発達の段階に応じた指導に努めます。
また,児童生徒の通学の安全を確保するため,地域や家庭,関係機関と連携し,通学路の見守り活動や点検・整備を行います。
このほか,経済的な理由により,就学が困難な子どもの保護者に対して就学援助による支援を行います。
2 地域とともにある学校づくりの推進
二点目は,「地域とともにある学校づくりの推進」についてです。
学校と家庭や地域が一体となって子どもを育むとともに,教職員一人ひとりが個性・能力を十分に発揮できる学校づくりを推進することが重要です。
このため,すべての市立学校に導入したコミュニティ・スクールを通じて,保護者や地域と連携した特色ある様々な取り組みを促進するほか,地域と学校をつなぐパイプ役として地域コーディネーターの配置を拡充するなど,地域学校協働活動の充実を図ります。
幼児教育から小学校教育,小学校教育から中学校教育への円滑な接続につきましては,教職員や園児・児童・生徒の交流,就学・進学に向けた情報やめざす子ども像の共有などに取り組みます。
学校における働き方改革につきましては,引き続き,教職員の勤務実態などを把握するとともに,校務支援システムを活用した校務の情報化や,外部人材の配置による学校運営体制の充実を図るなど,組織としての業務改善を進め,教員と児童生徒が向き合う時間の確保に努めます。
部活動につきましては,本市の子どもたちが,少子化の中でも将来にわたりスポーツや文化芸術活動に親しむ機会を確保できるよう,学校部活動の地域連携や地域移行を段階的に進めるための推進計画の策定に取り組みます。
教職員の資質・能力の向上につきましては,南北海道教育センターにおける研修も含め,その内容を幅広く充実するとともに,指導主事等が学校からの要望に応じて行う訪問研修を実施するほか,ICTを活用した教育活動の質を向上させるため,「ICTサポートセンター」を継続設置し,サポーターを学校へ派遣します。
また,円滑な学級運営を行うことが困難となっている小学校に対し,日常的な学習指導や生徒指導を補助する非常勤講師を配置することにより,学校における指導体制等の充実を図ります。
学校再編につきましては,子どもたちにとってより望ましい教育環境を整備する観点から検討を進めてまいります。
学校施設につきましては,子どもや教職員等の健康を守るため,保健室に常設型エアコンを設置するとともに,当面の対策として,スポットクーラーおよび窓設置型エアコンを配備するほか,令和7年度以降,全ての市立学校・幼稚園への常設型エアコンの整備を進めるための実施設計を行うなど,学校環境の改善に努めます。
市立函館高等学校につきましては,進学重視型の普通科単位制高校として,創意ある教育課程を編成し,地域に学び,地域で学ぶ「函館学」を実施するなど,魅力ある高校づくりを推進します。
3 函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成
三点目は,「函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成」についてです。
子ども一人ひとりが,函館の魅力を感じ,関わりを深め,愛着や誇りをもつとともに,未来に向かって新たな価値を生み出す資質・能力を育むことが重要です。
このため,小学校において,デジタル社会科副読本を活用するほか,世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の大船遺跡や垣ノ島遺跡,縄文文化交流センターを見学するなどの郷土学習を実施し,歴史や文化,自然など,函館の良さを感じることのできる教育活動を推進します。
また,豊かな国際感覚を育む教育活動を推進するため,外国語指導助手を活用したコミュニケーション能力の育成を図る学習の充実のほか,市立函館高等学校の生徒を対象とした海外留学事業を実施します。
さらに,望ましい職業観・勤労観などを身に付けることをめざすキャリア教育の充実を図ります。
このほか,各教科の学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な教育であるSTEAM教育,とりわけ本市の地域資源である「海洋に関するSTEAM教育」に取り組みます。
4 生きがいを創り出す生涯学習の推進
四点目は,「生きがいを創り出す生涯学習の推進」についてです。
市民一人ひとりが生涯を通じて学び続け,その成果を生かし,充実した生活を送ることができる生涯学習の推進が重要です。
このため,家庭教育や子育てに関するセミナーを開催するほか,高齢者大学を開設するとともに,各種市民活動団体等との連携のもと,様々な学習活動を促進し,これらの情報を提供するため,学習情報誌「まなびっと広場」を発行します。
また,市民会館へのWi-Fi設備の設置など,社会教育施設やスポーツ施設,学校を市民の学習活動の場として提供し,幅広い世代の市民が主体的に学ぶことができる機会の確保や学習の成果を生かすことのできる環境の充実を図ります。
5 心の豊かさを育む文化芸術の振興
五点目は,「心の豊かさを育む文化芸術の振興」についてです。
文化芸術や文化遺産に触れる機会を充実させ,市民一人ひとりが創造性を高め,感性を豊かにすることができる文化芸術の振興が重要です。
このため,青少年の優れた作品などの発表の機会である「青少年芸術教育奨励事業」や,小・中学校に芸術家等を派遣し,児童生徒が文化芸術に触れる場を提供する「文化芸術アウトリーチ事業」などを実施します。
また,関係団体と連携した「はこだてカルチャーナイト」や「市民文化祭」を開催するとともに,市民の自主的な文化活動である「市民創作『函館野外劇』」や「はこだて国際民俗芸術祭」への支援を行います。
さらに,市内の文化芸術団体の自主的かつ活発な活動を支援します。
文化財の保存・活用につきましては,五稜郭跡において堀の石垣維持に取り組むとともに,遺愛学院本館等および大谷派本願寺函館別院の保存修理費用を助成します。
また,北海道が設置を検討している世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の活用に向けた拠点施設の誘致に取り組みます。
大船遺跡や垣ノ島遺跡につきましては,遺跡の活用および受入体制の充実に努めるとともに,大船遺跡につきましては,保存活用に係る基本方針や方法を定める保存活用計画を策定します。
博物館につきましては,常設展に加え,企画展を開催するなど,市民や観光客が函館の歴史への理解を深める取り組みを推進するほか,(仮称)総合ミュージアムの整備に向けた検討を進めます。
6 健やかな心身を育む運動やスポーツの振興
六点目は,「健やかな心身を育む運動やスポーツの振興」についてです。
市民一人ひとりが健やかな心身を育むため,運動やスポーツの振興を図ることが重要です。
このため,障がい者や高齢者を含むすべての市民が運動やスポーツにアクセスしやすく,自分に適した運動やスポーツに出会うことができる環境を整えるため,引き続き,はこだて市民健幸大学実行委員会に参画し,パラスポーツやニュースポーツ,アーバンスポーツの体験会や栄養バランスの良い食事の講演会を開催するなど,スポーツ・レクリエーション活動の一層の推進を図るとともに,市民の健康意識の向上に努めます。
全国のランナーから高い評価を得ている「函館マラソン」につきましては,さらなる魅力の向上に取り組みます。
本年8月に「2024モルック世界大会in函館」が,国内で初めて開催されます。
こうした各種競技大会の開催支援やスポーツ合宿などの誘致に,函館市スポーツ協会をはじめとする各種団体と連携して取り組むことで,競技人口の拡大や競技力の向上を図るほか,市民のスポーツへの関心を高めるため,様々なスポーツイベントの誘致に努めます。
以上,令和6年度の教育行政執行にあたっての基本方針を申し述べました。
教育委員会といたしましては,市民一人ひとりが生き生きと学び続けることのできる環境の整備に努めるとともに,郷土の歴史と文化に誇りをもちながら,ふるさと函館を支える人材の育成をめざし,市民と連携・協働する教育行政の積極的な推進に努めてまいります。
市議会および市民の皆様からの一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
各年度の「教育行政執行方針」についてはこちらからご覧ください。