公開日 2022年07月14日
経済建設常任委員会行政調査
令和4年5月17日火曜日から5月18日水曜日
5月17日 柏市調査
<所見>
経済建設常任委員会は「函館駅前・大門地区の活性化に向けた公共施設整備」についての参考とするため、令和4年5月17日に千葉県柏市「柏市文化・交流複合施設パレット柏」を行政調査した。
(1)公共施設の整備に至った経緯
柏駅周辺地域は、内閣府より都市再生緊急整備地域に指定されており、都市開発事業を通じて増進すべき都市機能に関する事項として、広域的な商業機能の一層の集積に加え文化交流機能等の導入がうたわれている。再開発検討以前より交流機能を併設した図書館建設構想があり、複数の柏駅周辺候補地からD街区の再開発が候補地に決定したが、その後の計画変更等を経て、現在の文化交流施設として整備されるまでの経緯は下記のとおりである。
平成19年
柏市新中央図書館の候補地決定
・3層6,000平方メートル
・図書館+交流機能
・保留床を購入
平成20年
柏駅東口D街区第一地区再開発の都市計画決定
(9月にリーマンブラザースHDが破綻)
平成22年
都市計画案を「商業・住宅複合案」に変更
計画を見直し交流機能のみの施設へ計画変更
・1層2,300平方メートル
・交流機能のみ設置
・床は賃貸(東日本大震災の放射能除染対策などの影響により床の取得見送り)
平成23年
都市計画変更決定
平成24年
文化交流施設の利用計画策定業務委託
検討委員会の設置(学識・商業・NPО等、外部委員も入れた委員会)
平成25年
関係部課長会議の実施、施設コンセプト・運営方針などの確認
平成26年
パブリックコメントの実施
平成27年
実施設計・内装工事
平成28年
建物オープン共用開始
(2)各公共施設の設置効果・利用状況
パレット柏という愛称は「絵の具のパレットのように沢山の色(人や文化)が集まって、混ざり合って新しい色をつくる場になるように」という意味が込められている。市民が集い、活動し、交流する場(市民活動のプラットホーム)をコンセプトに、平成28年5月に開設した。柏駅南口から徒歩3分の利便性で年間約20万人の来館者があり、学生や現役世代からシニア世代まで幅広く利用されている。
○施設利用実績(令和3年度末時点)
・来館者数 21万5,826人(月平均約1万8,000人)
・利用登録団体 3,133団体(オープンスペース除く)
・施設稼働率 約65%(オープンスペース除く)
・駅周辺以外からの利用者(団体)割合 約70%
・利用世代構成(オープンスペース除く)
10~20代…14% 30~40代…14% 50代…12% 60代以上…60%
○再開発事業の評価
再開発事業について「評価できる」と「やや評価できる」は、合わせて80.7%と半数を超えており「あまり評価しない」は3.2%で「評価できない」は0%となっている。
(3)集客事業(イベントや周辺施設とのコラボ等)への取組状況
基本的に指定管理者の自主事業としての運営であり、さまざまなイベントの企画など各月の自主事業や提案事業イベントを多彩に計画し、年間の一覧表を作成し、施設は勿論、周辺とのコラボなどで集客や活性化に努めている。今年度4月から年度末の3月までの一覧表を拝見したとき、ぎっしりと各月のイベントが掲載されている中から特に目についたイベントとして、年度末3月22日から29日までの期間の自主事業、ストリートピアノである。癒しの空間と感動を、一般市民や若者、学生、子どもたちに提供できるイベントとして、周辺の活性化につながるよう定着させ実施していくとしている。
(4)市民や民間団体、市外来訪者の反応
・施設利用料金は、市内在住者と市外在住者の利用料金は、区別されている。
・広域アンケートからの評価としては、柏駅周辺について10年前の様子と比べて、現在の様子はどうなったかについて「賑わいと活気のある街になった」が最も回答が多く28.3%となっており、次いで「選択肢が増え、より便利な街になった」が、25.5%「他地区からも来訪者が増えた」が23.0%となっている。
・施設利用者のアンケートからの評価として、パレット柏の利用者の約半数は、駅周辺の商店街を利用する事が増えたと回答しており、その利用時間は1時間以上が52.6%と半数を超えて効果が出ている。
(5)地域の活性化への寄与(周辺施設への経済効果など)
・年間約40万人の「パレット柏」利用者が再開発により整備された飲食店だけでなく、周辺商店街も利用し、まちのにぎわいが向上している。
商店街アンケートでは、他地区の来街者が増えたかについて、「増えた」が35.7%と「減った」の9.4%を大きく上回っている。
・施設利用者アンケートでは、駅周辺の商店街で買い物する機会について「買い物等するようになった」が50.9%となっている。
・歩行者通行量調査についても、再開発工事前(平成21年)と工事終了から1年後(平成29年)を比較すると、周辺道路の歩行者通行量は9万872人が11万2,503人と、2割以上の増となっている。
(6)今後の課題・問題点
施設周辺商店街のヒアリングでの意見として「自分達でやらないと街は変わっていかない。みんなで街をつくっていく意識が必要だと思う」「街は生き物である。タイムリーに対処していく姿勢が必要だろう」「再開発で目指している方策が貧弱であるように思う。街をつくるのは市民である。利害関係者だけで話し合うのではなく、広く街の人と議論することが必要だと思う」といった声が聞かれていることから、商店街等と連携し、地域ニーズにあわせた機能を付加するなど、特色ある商店街を形成し、魅力あふれる街となるよう、交流人口の増加に向けた取組が望まれている。
(7)まとめ
函館駅前・大門地区の活性化に向けた公共施設整備にあたり、視察先の千葉県柏市のパレット柏と本市の環境の違いや函館市の課題に着目して調査を行った。柏市は交通アクセスに非常に恵まれているまちであり、都心部に近い環境にあることで、それらの利を生かした開発事業が可能であり、公共施設としての利用客に対する配慮(サービス)や地域内、地域外での人流移動に対する取組などには強く熱意を感じた。同時に周辺商店街のにぎわいと活気を取り戻すため周辺商店街とコラボしたイベントや、周辺商店街の意見を取り入れることで互いの利用者が増え、周辺商店街などへの活性化につながり、飲食だけではなく幅広い買い物の選択ができる多様な商業圏が形成され、買い物客などで非常に経済効果が出ているとのことであった。実際に施設やその周辺を見学すると活気のある人流・動線を実感することができ、参考となった。
5月18日 大和市調査
<所見>
函館市議会経済建設常任委員会は「函館駅前・大門地区の活性化に向けた公共施設整備」について、函館駅前東地区市街地再開発準備組合から「図書館機能・交流機能を有する公共施設の設置についての要望」を受けたことを踏まえ、平成28年11月に開館した「大和市文化創造拠点シリウス」を行政調査した。
(1)はじめに
大和市は、神奈川県のほぼ中央に位置し、横浜、相模原、藤沢、海老名、座間、綾瀬、東京都町田の各市に隣接している。面積は約27平方キロメートルで、函館市の面積677.87平方キロメートルの約4%である。都心から40キロメートル圏内にあって3つの鉄道が東西南北に走り、東京へ1時間弱、横浜へは20分で行くことが出来る。市内には8つの駅があり、市域のほとんどが駅まで15分以内の徒歩圏内にある。道路網も国道16号線、246号線及び467号線のほか県道4線が縦横に走り、東名高速道路横浜町田インターチェンジにも近いなど、交通の利便性に恵まれている。大和市の人口は24万1,558人(令和4年3月)で現在も微増を続けている。(函館市の人口は令和4年4月で24万6,395人なので人口はほぼ同規模といえる。)
(2)「図書館城下町 大和市」
大和市は大和市立図書館(大和市文化創造拠点シリウスにある図書館)を中心に5館(他の4館は、大和市立中央林間図書館・大和市立渋谷図書館・桜丘学習センター図書室・つきみ野学習センター図書室)あり、「図書館城下町」を旗印に、各施設ごとに個性的な図書サービスを展開している。
今回行政視察した「大和市文化創造拠点シリウス」は、図書館、芸術ホール、生涯学習センター、屋内こども広場を中心とした文化複合施設で、開館(平成28年11月)からわずか3年で累計来館者数1,000万人を超えた図書館として、来館者数は日本一と言われている。シリウスにある大和市立図書館は、従来からある「図書館」という枠を離れ、利便性や過ごしやすさを徹底追求した新しい図書館である。1階から6階までの全てのフロアに特徴を持たせている。例えば、3階は思い切り遊んで学ぶ子どものためのスペース、4階はくつろぎながら本に親しむ健康都市図書館、6階は仲間と集い学ぶ生涯学習センター等、来た人が「ずっといたい」「また来たい」と思ってもらえる工夫がされている。
また、せっかく「図書館」に来ても、座れない・読めない・過ごせないとならないで、「人が主役の図書館」となるように、約990席の座席が用意されている。
大和市文化創造拠点の愛称「シリウス」は、地球から見える恒星の中で最も明るい一等星で、「文化創造拠点が未来にわたって光り輝き、市民に愛される施設となるように」との想いを込められ名付けられた。
(3)「健康都市 やまと」
大和市は市制50周年に当たる平成21年に「健康都市 やまと」を宣言(※1)し、「人の健康」「まちの健康」「社会の健康」の3つの健康を育て、市民一人一人の健康な生活の実現に取り組んでいる。
大和市では、高齢の人が閉じこもりや運動機能の低下を予防することを目的に、市内100カ所以上の公園に健康遊具を設置し、健康向上や介護予防のために活用している。大和市文化創造拠点シリウスの指定管理者「やまとみらい」の片山統括責任者は「シリウスを外出機会を増やすきっかけにしたい」と話していた。
大和市の高齢化率は全国平均を下回っているが、65歳以上を含む世帯における単身世帯の割合は40.7%と全国平均の34.3%を上回っている。「健康都市 やまと」を目指し「1人になっても、独りぼっちにさせないまち」を実現するために、「大和市文化創造拠点シリウス」は、多くの市民の「居場所」となっている。実際に「シリウス」には、子どもから大人まで幅広い年代の人たちが、本を読むためだけでなく、多様な目的で訪れており、週に何度も来るリピーターの姿も多く、たくさんの人の「新たな居場所」になっている。
(4)最後に
函館駅前・大門地区は「函館の顔」ともいえるエリアであり、市民はもとより近隣市町や多くの観光客を迎え入れる拠点となる地域であり、この地域の活性化とにぎわいの創出は函館市にとって最重要課題である。
駅前・大門地区にふさわしい「公共施設」の整備に向け、「図書館城下町」・「健康」をキーワードとした大和市の取り組みは、大変参考になった。誰もが訪れたくなり、地域の賑わいと活性化に繋がる「新しい居場所としての公共施設」が整備されることを願い、行政調査の所見とする。
※1「健康都市 やまと」宣言
健康は、日々の生活の基本であり、幸福を追求するために、ともて大切なものです。都市で生活するわたしたち市民が、生き生きと暮らすためには、保健、福祉、医療などを通じて「人の健康」を守るとともに、安全で快適な都市環境が整う「まちの健康」、人と人とのあたたかな関係に支えられる「社会の健康」を育てていくことが重要です。大和市は、市民一人ひとりの健康な生活の実現に向けた取り組みを進め、「健康都市」を目指すことを宣言します。(平成21年2月1日)
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