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平成30年度 経済建設常任委員会行政調査

公開日 2018年09月26日

更新日 2021年12月14日

経済建設常任委員会行政調査

平成30年5月22日火曜日から5月24日木曜日

 

5月22日 鶴岡市調査

鶴岡市視察の様子.jpg

<所見>

【調査概要】
 山形県鶴岡市のランド・バンク事業について調査した。
 鶴岡市の人口規模は約13万人(平成27年国勢調査)、面積1,311.49平方メートルである。
 人口は函館市の約半分でありながら、面積は函館市の約2倍であり、平成17年の合併以来東北一の面積を誇る市である。規模としては、函館に近いというわけではない。しかしながら、空き家件数が年次調査ごとに増加し、函館市同様、狭隘道路・狭小宅地に隣接する区画の整理、空き家対策に頭を悩ませてきた自治体の一つであり、さらには目新しい手法によりこれらの課題に取り組んでいることで注目される自治体でもある。

【ランド・バンク事業の背景】
 平成22年から23年にかけて全戸調査をした空き家について、平成27年にもう一度全域を調査した結果、平成23年の結果であった2,273棟が、4年間の間に2,806棟と、約500棟増加の結果を得た。その空き家について、危険度の基準を設け、ランクAからランクDまでの4段階に分けて評価した。
 空き家ができやすい箇所についての特徴も示された。市の中心部は江戸時代から中心部として存在しており、かつ、戦禍に見舞われなかった地域であるため、たたずまいが古くなっている。そのため、郊外に向けての人口移動があり、結果として空き家・空き地、さらには高齢化率の高いエリアとなったという。人口移動も原因であるが、実のところそれ以上に、住んでいた人がお亡くなりになったり、高齢化に伴い高齢者施設に入所することによって空き家が生まれるという。
 空き家の活用で困っていることに関しては、建物の解体費を所有者が出せない事例や、活用見込みのない土地の建物解体により固定資産税が上がるなどの事由で活用に至らない例である。このことについては、鶴岡市特有というよりは全国で共通した課題に見受けられる。

【ランド・バンク事業の前身】
 鶴岡市では上記の事態に鑑み、平成25年に空き家に関する条例を設置した。特徴としては、鶴岡市が空き家に対する応急処置に当たれるようになったことと、空き家の有効活用を可能にしたことの2点である。この2点については対応に当たる部署は分かれていて、応急処置については環境部、有効活用については建設部都市計画課が当たることになっている。
 今回の調査対象である事業を行うに当たって、協力者を得る作業がどのような流れであったかについても聞いた。乱開発を防ぐ目的で行った都市計画の線引きが存在するため、開発する場所がすでになくなってきていることを不動産関連業に説き、新たに開発する場所がない以上、街の再開発を進める以外に進展がないことを理解してもらった。

【ランド・バンク事業のはじまり】
 ランド・バンク事業については、まちなか居住の研究を進めている早稲田大学の研究者と進めた。
 まず初めに手掛けたのは、住みかえが進まない理由の追及。導かれた結果は、狭小宅地・狭隘道路がその原因の大きな部分を占めているであろうことであった。
 平成23年にランド・バンク研究会を立ち上げ、無接道の危険空き家を研究会で試しに壊してみた。隣地の人に建物を壊した土地の一部を買い取ってもらい、その売却費を解体費に充てた。これにより、解体費を捻出できないことが原因で土地の新たな活用ができなかった事例を打破することができた。

【参考にした事業】
 ランド・バンクは元々アメリカでおこなわれていた手法で、安くまとまった土地を買い取って開発し、投資先を求めることを目的とした事業である。その手法を小規模でまねたものが、鶴岡市のランド・バンクである。アメリカのランド・バンクと鶴岡市のランド・バンク事業の違いは、鶴岡市の場合、事業が向かう先が投資家ではなく、あくまでステークホルダーが所有者に限定されているという点である。行政の立場としては事業で取り扱った結果が住環境の向上に結び付くという事業目的を有している。
 結果的に、社会的実験をしていたものが、NPO事業として実を結んだ。

【ランド・バンク事業が扱う案件】
 空き家でも、全ての空き家を対象にしているのではなく、程度のいい空き家は民間の不動産屋が鋭利事業としてまわすべきと考えていて、ランド・バンク事業はあくまで民間では手をつけたがらない土地について関わっていくという理念を持っている。

【鶴岡市のランド・バンク担当部の感想】
 鶴岡市で居住に関するニーズ調査をした。山形県は全国でも3世帯家族が多い。それでもいる核家族のなかでみんなどこに住みたいかというと、親と同じ小学校区(町会までとはいかない)に住みたいというニーズがあったと感じたという。
 さらには、状況的に、開発余剰地がないために仕事を失うはずであった宅建関係の方の理解があって、実現できた事業であるという意識がある。
 鶴岡市は冬の間、両端1メートルは除雪の堆積幅になるため、道路幅6メートルを目指しており、その実現にも結びつけることができる。
 法制度が変わらなければ状況が激変することはないと思っているものの、ランド・バンク事業をわずかずつでも手がけることによって、将来の街の形は変わっているだろうという展望のもとで展開している。

【NPOの課題】
 宅建業者さんが動いて得た収入の数パーセントを、NPOへの寄付して宅建業者さんからいただき、NPOの収入としている。
 空き家管理受託は16件しかなく、1件につき数百円から数千円しか収入が発生しないことから、安定した収入にはなっていない。
 一番大きい収入は解体であり、1件解体に300万円とか400万円がかかるもののうち数パーセントの寄付をいただく。現在32件の実例がある。解体の見積り項目にNPOへの寄付金を計上している業者が存在するが、それでは解体に困っている人がNPOに依頼することのメリットが無いので、そのような見積りの出しかたをしないように解体業者に呼びかけているという。
 構成としては、50社加盟、協力社10社となっている。そのなかでも積極的に協力してくれる会社は5社くらい。この事業自体が民間企業としてはもうかる類いの事業ではないため、あまり協力してもらえていないのが現状。

【その他の課題】
 土地所有者不明の土地の対策が課題である。現在鶴岡市では、その課題に対する取り組みはこれといって行っていない。
 ランド・バンクの事業自体が、個人の財産への行政の支援という見方をされてしまう側面がある。
 個人財産への支援と受け止められるモラルハザードも懸念されることから、空き家のそのものへの補助金は出さなかったものの、解体補助金を設けてしまった。ただし、地域の町内会や団体に出しているという形をとり、空き家の引き倒しに対する人工代として予算執行している。現在までに3件の事例がある。
 解体に関しては、空き家を消防に提供して、わざと倒壊させて救助訓練に使用したという有効活用かつ解体の実例である事例を作った。

【まとめ】
 空き家の解体や、狭小であるがゆえに活用方法が見いだせない単独の土地など、現状が動きづらい不動産に対して、解体費用の捻出を可能にしたり、隣地への土地の編入などで道路拡張を含めた狭小地の活用を可能にするなど、手法としてはたいへん参考になる。
 しかし、運営主体であるNPO法人の収入が安定しない点、また、不動産の流動性を高めるための廉価売却の推進などが仇となり、協力してくれる宅建業者にとっては薄利でありながら業務内容が多いことから敬遠されがちである点など、推進運営方法に課題が多い。
 その負担感を軽減しながらも、事業推進を図る必要があり、結果的にファンドという形で行政の一般会計から継続的に支出が発生している点にも注意が必要である
 これらを加味したうえで、区画の再編方法としては参考にすべきと考える。

 


5月23日 京都市調査

京都まちづくりセンター視察の様子.jpg

<所見>

 今回の経済建設常任委員会では、「西部地区のまちづくりについて」と題して現在調査に取り組んでいるが、函館発祥の地である西部地区は、たくさんの歴史的建造物と自然環境が一体となった函館ならではの観光スポット満載の地区だが、定住人口の減少や高齢化、それに加えて空き地や空き家の増加で、今のままではせっかくの魅力あふれる西部地区が、地域の魅力をなくしてしまうような状況である。
 こういった中、函館市では居住と観光が融合した質の高い住宅地として再生するための事業を始めたところである。
 この先、空き家・空き地をどう活用していくか、道路の整備はどのようにしていくかなどの点に留意しつつ、歴史的建造物の保全にも力を入れ、古いものと新しいものが自然に調和できる町並みづくりを進めていくべきではないかと考えている。
 京都市景観・まちづくりセンターは、京町家の保全・再生などを含めたいろいろな取り組みを進めているという観点から、スケールの大きさに違いはあるものの参考とさせていただく点が多々あると考え京都市を行政視察市として選定した。
 京都市景観・まちづくりセンターは、昨年創設20周年を迎えた。
 主に京町家の継承、地域のまちづくり支援などに取り組んでいる。
 京都市は南方の開けた地域以外は全て山に囲まれており、10年ほど前に景観に対しての厳しい条例が制定されたが、それ以前からも山裾部分は開発を規制する方針がとられてきている。
 また、観光面においては、観光客が少ない季節にさまざまな京都のイメージを生かした施策を打ち出し、イベント開催にも積極的に取り組み、平成20年には目標の観光客5,000万人を達成している。
 世界的に有名な雑誌「トラベル・アンド・レジャー」でも「訪れたいまち」世界1位を獲得しており、冬場の観光客誘致に苦慮している函館市としても、大いに参考とさせていただきたい点であると感じた。
 ただ、余りにも観光客がふえ過ぎ、京都らしい情緒が感じられなくなったという意見や交通が混み過ぎて出かける意欲を失うという市民の不満もあがっているようである。
 どちらにしても、函館市から見ると、うらやましい悲鳴と感じてしまうが。
 交通に関しては、観光客側からも「バスの行き先がわかりにくい」、「混んでいる」というアンケート結果が出ているとのことで、バスから地下鉄への誘導の計画を進めているということである。
 函館市としても、参考にできる部分があるのではないかと感じた。
 インバウンドの多い京都市であるが、特に目玉となるスポットの一つが、今回の視察でも注目している「京町家」であると思う。
 京町家の原形は500年ほど前にすでにできていると言われ、道路に対して屋根が平行であり、なおかつ家の前のほうは小商い、何か物を売ったりするような小さな商売をするようなスペース、そして後ろが住居になっているものが「京町家」と呼ばれる。
 現在、京都市内には4万軒の京町家が残っていると言われている。
 京町家には建築基準法が制定される以前の建物であるという定義があるため、新しく建てることは不可能である。
 そのため、何と言っても京町家の魅力は都市空間を形成する大切な資源ということだろう。
 京都には、寺社・仏閣など世界遺産となっているものが多いが、そういったものだけでなく民家も含めて京都市の景観であり、だからこそ継承していきたいという思いになるのではないか。
 最近は京町家をリフォームしてレストラン、民泊(ゲストハウス)にするケースがふえてきており、地価の高騰も相まって、マンション建設に踏み切る事例も多くなってきているようだが、古きよき資源を守っていく大変さは、函館市も実感しているところではないだろうか。
 また、京町家も空き家問題を抱えているとのことで、高齢者が維持・修繕費を捻出できず、そのままになっている京町家が調査の結果ふえている状況から、景観・まちづくりセンターにおいて、なんでも相談の窓口を設けたり、登録している専門家(法律家、建築士など)にセンターから謝礼を支払い協力を得ての取り組みなどを行っている。
 その他、市の取り組みとして、耐震診断の助成をし、インセンティブを与えることで、少しでも京町家を残していこうという熱意がうかがえる。
 函館市も、人口減少と空き家問題などの点で、西部地区の魅力を失うのではという危機感を持っているので、ぜひ参考にしてはどうかと感じた。
 やはりこういった問題は、行政だけで解決可能なことではないので、各方面のプロともっと連携を密にすることが近道だと思う。
 京町家の未来を思う基金として「京町家まちづくりファンド」というものもある。歴史的にも非常に価値のある京都の未来を思った篤志家の方と京都市、国がつくった基金で、改修に対しての助成を行うことによって、大切な資源である歴史的景観を守っていく、そしてその中で行われている暮らしの文化を継承していくという狙いである。
 維持していくためにはお金がかかるのは当然だが、所有者だけにそれを負わせるには無理がある。
 こういった助成を活用して、グレードの高い歴史的町並みを形成できれば、それがまた、市の有効な資源となっていくと思う。
 寄付も多いとのことだが、基金をふやすためのいろいろな取り組みも行われており、そういう努力に支えられての助成のようである。
 今回、西部地区のまちづくりをテーマに、景観・まちづくりセンターを訪れたが、たくさんの観光客を日々迎え、全く暮らし向きの異なった海外の方々に喜ばれている京都というまちを見事に支えている存在であると感じた施設だった。
 京都の古きよき町並みがこのセンター内にそのまま凝縮されているような錯覚を覚えるほどの手応えがあり、小さな子どもたちであったとしても、このセンターを見学しさえすれば、京都が把握できると言っても過言ではない印象だった。
 スタッフの充実さ、働いている人のために、21時半まで相談窓口の対応をするなどの姿勢の積み重ねが京町家の継承につながり、観光客のニーズに応える結果に結びついているのではないだろうか。
 自分の住むまちに当たり前のように歴史的建造物が存在し、日々の営みの中に自然に観光客が行き来する、そんな西部地域が生まれたらどんなにすばらしいだろうと思いを巡らしたが、現実はなかなかうまくはいかない。
 今回の行政視察を参考に、十分な議論を重ね、経済建設常任委員会として、西部地区のまちづくりに協力していけたらと改めて思いながら視察を終えた。

 
 
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