公開日 2018年03月16日
更新日 2021年12月14日
総務常任委員会行政調査
平成29年10月30日月曜日から11月1日水曜日
10月30日 箕面市調査
<所見>
函館市議会総務常任委員会は公共施設の維持管理業務を個別の委託から包括的民間委託へ切り替えることにより、経費の削減などに取り組んでいる先進地である大阪府箕面市を行政調査した。
箕面市でのこれまでの施設管理業務は、各施設管理者が各施設で業務ごとに個別に発注していたが、これを集約して施設管理業務事業を一本化にすることにより、スケールメリットによる経費削減と事務の効率化を図ることにした。
今から5年前の平成24年(2012年)に、庁舎や全小・中学校など市内51公共施設の警備や清掃などの委託業務、126業務(予算総額約14億7,000万円)の委託契約を集約し、一括して総合評価入札を実施した。
入札方法は、中小企業や地域の事業者など多くの事業所が参加できるように、126業務を事業者が自由に選択し、入札することが出来るとする全国初の「希望業務選択方式」による入札とした。また、事業者が創意工夫や柔軟な発想による組み合わせで事業を受託して効率性を向上させ、経費削減を図れるようにした。
平成23年4月から、試行的に近接施設である市立病院、総合保健福祉センター、同センター分館、豊能広域子ども急病センターの4施設について総合一括委託を実施し、5年間で総額3億円の経費節減効果を得ている。こうしたことを踏まえてスケールを大幅に拡大して「希望業務選択方式」という新たな入札スタイルを実施した。
導入に当たっては、包括委託に含むことが可能な対象業務の抽出や事業の実現性について複数社から業務見積を徴収するなど、課題の整理に努め、市民部と総務部で連携して事業を構築し推進した。
対象施設:51施設(庁舎、全小中学校、保育所、幼稚園や消防施設など)
対象業務:126業務(警備、清掃、設備管理、樹木選定など)
契約期間:平成24年10月1日から平成29年9月30日の60ヶ月間
上記のように、管理委託業務に指定管理施設は含まれていない。つまり、指定管理施設の警備、清掃、設備管理などは指定管理者がすることとして、指定管理者が管理していない公共施設を対象とした。(今後については、その点も含めて検討する可能性があることの示唆があった。)
【希望業務選択方式について】
警備や清掃などの126の業務について、事業者が業務を1から126まで自由に選択し、入札できること。
【業務選択例】
1.施設ごとに選択する場合:施設全体の警備+清掃+設備管理
2.同じ業務(警備)だけを選択する場合:本庁舎+A小学校+B中学校
3.地域(A地区)で選択する場合:(A小学校+A中学校)の警備+清掃+設備管理
4.1業務だけを選択する場合:C地区の上下水道の設備管理
以上のように、さまざまな組み合わせが可能となり事業者が参入しやすいようにした。
導入の効果(個別契約時との比較において)として、契約行為を一括化したことにより、事務作業の軽減化が図られた。また、入札金額は5年前の14億7,000万円が11億5,000円となり、約3億2,000万円の削減効果を得ることが出来た。
平成24年の入札では、一定規模のあるビル管理会社2者(1者は共同入札)が落札者となった結果を踏まえて、入札の選定方式の検証を行った。その結果、平成29年の入札方式は前回採用した「希望業務選択方式」ではなく、「全業務一括受注方式」とし、「総合評価落札方式」は継続して実施することにした。「全業務一括受注方式」にすることにより、受注者が分散してスケールメリットが活かせい、あるいは受注しない業務が出る可能性があるなどといったデメリットを解消することができた。一方で、「小規模な市内事業者は入札参加が難しい」という問題も生じた。
平成29年の入札では、全業務の一括受注となるため、企業としての力量に関する項目に重点を置き、特に業務遂行力を高配点として総合評価した。その結果、2事業者が入札に参加し、総合評価の結果、ビル管理会社を代表とする共同入札者が落札した。今後は、事業者が自ら提案内容を実現・実行するとともに、一括受注のメリットを活かした改善を進めていくことで、公共施設管理のより一層の充実を図っていくとしている。
箕面市は大阪府内で5年連続して「住みよさランキング」1位となっている。人口も直近の6年間で約6%という非常に高い人口増加率となっている。しかし、箕面市人口ビジョンによれば、2025年までは増加するものの、それ以降は減少し、長期的に見ると、人口減少・少子高齢化の影響は避けられないと想定している。そのため、将来に備えて、今から公共施設等の管理の在り方について知恵を絞っていることは、大いに見習わなければならない。
箕面市の人口は平成29年9月末現在で137,766人、函館市は263,101人で箕面市の約1.9倍である。面積は箕面市が47.90平方キロメートル、函館市は677.94平方キロメートルで箕面市の約14.2倍もある。こうしたことを考えれば、公共施設等の管理の仕方も、「施設全体(警備+清掃+設備管理)」や「同じ業務のみ(本庁舎+A小学校+B中学校)」、また、「同じ地域(警備+清掃+設備管理)」など、函館市での今後の公共施設等の管理の在り方について参考にしたい。
今回は、公共施設だけでなくインフラの管理についても調査できればと考えていたが、残念ながらインフラの管理については調査できなかった。函館市の公共施設等の管理について、インフラの管理も含め、今回の調査を参考にしっかりと取り組んでいきたい。
10月31日 我孫子市調査
<所見>
我孫子市の人口は、13万2353人(平成29年10月1日)であり、函館市の2分の1の自治体となる。我孫子市の調査では、「公共施設包括管理業務委託」の導入経緯と概要について説明を受けた。平成23年度に提案型公共サービス民営化制度の提案が採用され、公共施設の整備等の保守・点検、維持管理等の包括管理業務を平成24年度4月から導入している。
事業者の選定は、一社(大成有楽不動産)と3年間の随意契約を締結。
平成24年度から26年度では63施設、平成27年度から平成29年度までは73施設が対象となっている。
業務内容は、1定期点検等の包括管理(窓口の一本化、24時間受け付け窓口による迅速な対応)、2巡回サービス(月一回巡回、設備機器等の異常の有無の確認)、携行する工具等により可能な範囲で補修を実施、3施設管理運営に係るサポート、4インターネットを活用した管理情報の共有などである。
業務体制は、平日の管理体制はもちろんのこと、休日・夜間を含め24時間対応できる管理体制を確保している。
導入による効果は、業務面では契約の1本化により、事務軽減が図られた。緊急トラブルの対応として、受託者における休日、夜間24時間体制による迅速な対応が行われている。財政面では、平成24年度の包括委託導入時に5,000万円規模の点検業務において比較すると500万円程度の削減効果があった。ただし、巡回サービス、中短期修繕計画書の作成やインターネットを活用した管理情報共有業務を加えると包括委託が高くなるとのこと。
導入後の評価として、市民からの意見は特になく事業者からの苦情や不満の声も聞かれていない。市役所部局からは、休日夜間の対応が事後報告され歓迎されているとのこと。
今後の課題としては、施設の所管課が仕様書等をまとめるという契約業務を行っていないため、点検設備の連絡、点検の漏れが発生しやすい。所管課の施設管理への対応や意識の低下が懸念される。予防保全を実施することで修繕を必要とする箇所が多く一度に対応できないということであった。
我孫子市では、包括委託を一社随意契約ということで、すべて一括で業務を行っている。確かに、若干のコスト削減、24時間緊急トラブルの対応などでは、部局からは歓迎されている。しかし、地元業者の支援・育成という街の経済的な視点で角度を変えて見てみると課題も多いように見受けられた。
今回の調査を通して、今後、函館市としての公共施設の管理については、地元の事業者を巻き込んだシステムづくりが必要ではないかと改めて強く感じた。
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