公開日 2016年01月21日
更新日 2021年12月14日
総務常任委員会行政調査
平成27年10月28日水曜日から10月30日金曜日
10月28日 大阪市・大阪城公園調査
<所見>
大阪市は平成24~27年度の計画期間において「大阪都市魅力創造戦略」を掲げ、都市魅力創造に係る府市戦略の一本化と事業の融合・統合、世界の都市間競争に打ち勝つ都市魅力創造の基盤づくり、大阪にふさわしい都市魅力創造シンボルプロジェクトの検討を目的とし、府市一体の都市魅力創造戦略を策定し、観光・国際交流・文化・スポーツの府市戦略の一本化と事業執行体制の一元化を実践してきた。
さらにこれらを推し進めるため「大阪城公園PMO事業」を導入し、大阪城公園を重点エリアの一つに位置づけ、指定管理者制度による公園の指定管理者としてだけではなく、大阪城公園の観光拠点化に向けて新たな魅力ある施設の整備や既存の未利用施設の活用を実施するものである。
事業の成果として、民間事業者の優れたアイデアと活力を生かし、利用者サービスの向上と管理運営コストの縮減、PMO事業者による事業収益を公園全体の管理運営に還元し、一体的マネジメントにより維持管理し、大阪市からの代行料に依存しない管理運営を実現している。
今月4月からの制度導入により固定額年間2億2,600万円を基本納付金として大阪市へ納める予定であり、さらに収益が上がった場合には大阪城公園パークマネジメント全事業の収益から7%(約2,000万円~9,000万円)を変動納付金として還元する予定である。
大阪市と函館市を、規模、歴史、人口等において比較対象とするには大変厳しい状況ではあるが、十分に活用しきれていない文化財の一元管理を再考することで財源につなげ、歳入の確保を図り、また行政の基本に立ち返り「魅力あるまちづくり」とは何かということ、そして保存管理計画などについて十分に理解し、今後、積極的な利活用を図っていくことが函館市にとって非常に重要であると実感した。
10月29日 岸和田市・五風荘調査
<所見>
岸和田市が「五風荘」を指定管理者としたのは、2009年(平成21年)4月である。2008年(平成20年)までは、庭園鑑賞と貸室事業を中心に岸和田市観光振興協会が管理運営していたが、年間約2,900万円もの維持管理費が必要とされてきた。そこで、岸和田市では五風荘を岸和田城周辺観光の核の一つとして位置づけ、食文化の発信拠点として民間事業者のノウハウを導入し、住民サービスの向上と行政コストの縮減を図ることにした。なお、岸和田市は「市民自治都市」実現のための基本的考え方として、三つの原則「住民自治の原理」「補完性の原理」「持続性の原理」を定め、市民との協同のまちづくりを推進し、公民の役割分担の明確化のため、公共性や行政関与の度合いなどについての妥当性を検証する新行財政改革大綱を定めている。
当時、五風荘を含めた岸和田城周辺地域は、第1種中高層住居専用地域であり、また五風荘は国登録有形文化財であった。そのため、火を使うことができず、飲食の提供が出来ない状況にあり、飲食物は外部デリバリーで対応していたとのことである。
そこで、岸和田市は2008年(平成20年)、国の登録有形文化財の登録を抹消し、新たに岸和田市の指定文化財に指定し直した。まさに発想の転換である。このことにより、文化財としての保護のみならず、地域の名所である五風荘を食文化の発信拠点として活用できるとともに、自主財源の確保にもつなげたのである。このことにより、年間の維持管理費約2,900万円の削減が図られ、さらに、指定管理者の売り上げの1%(現在は3%)が市の収入となった。また、来場者用駐車場を確保するため、隣接する公用車・職員駐車場を指定管理者に貸与し、その賃貸料として月50万円(当初)の収入となった。
このように、五風荘の利用客が伸び、その結果、岸和田城の入場者も増え、城の周辺がにぎわいを増した。指定管理者制度を導入することによってうまくいったのは、「全ての条件が整った結果」と観光課長は説明された。それまで、岸和田城を案内しても食事を提供する場所がなかったこと。また、指定管理者となった「がんこフードサービス株式会社」は、既に大阪や京都などで、日本の伝統文化を守り継承を見据えた「屋敷」店舗の展開・運営に取り組んでいた実績とノウハウがあった。また、タイミング良くNHKの連続テレビ小説で岸和田市を舞台とする「カーネーション」が、2011年(平成23年)10月から翌年3月まで放映され、その人気もあって利用者が大きく伸びたとのことである。
がんこ岸和田五風荘の女将から五風荘について、ことしテレビ放送されたDVDをもとに説明を受けた。どんなにすばらしい歴史的文化財でも壊してしまえば一瞬であり、それを維持管理することがどれほど難しいか。また、その歴史的文化財も人に使われて初めて魂が吹き込まれる。そのタイトルは「『三方良し』お屋敷の“第二の人生"」であった。「売り手(岸和田市)良し、借り手(指定管理者・がんこフードサービス株式会社)良し、そして世間様(利用者)良し」となった成功例である。しかし、岸和田市における同様の指定管理者制度導入施設は他にもあるが、五風荘のように全てが上手くいっているとは言いがたい状況にあるとのことでもある。ここに、指定管理者制度の難しさもある。
岸和田市では、将来を見据えて「岸和田市文化財保護基金条例」を設置し、五風荘からの納付金の2分の1を積み立て、岸和田市の文化財の維持・保存に充てている。
岸和田市は今回、それまで眠っていた地域の宝「五風荘」に新しい息吹を与えた。函館市には五風荘のように活用できる「宝物」が眠ったままの状態になっていないか、いま一度、新しい命を吹き込み、函館市の魅力を発信する「宝探し」をする必要があるのではないかと強く感じた。
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