公開日 2014年08月18日
更新日 2021年12月14日
総務常任委員会行政調査
平成26年6月4日水曜日から6月6日金曜日
6月4日 足立区調査
<所見>
足立区の取り組みは、区長が児童・生徒に対しておいしい給食を食べてほしいという思いから始まったが、確実に成果を上げ、現在は全国的にも有名となり、テレビで放映されるまでになってきている。
区直営で実施していた学校給食を、昭和61年から民間委託に切り替え始め、平成12年に全校の委託が完了した。民営化の条件として、それまで続けていた自校方式(学校に調理場がある)を継続する、また栄養士を各校に配置するという2つのことは、今でも守られている。おいしい給食をつくる要素として、この2つの条件があったのではないかと思われる。
足立区のおいしい給食では、1.味(できたてのもの、味付け調理の工夫)、2.食材(安心・安 全・新鮮、地産地消、旬)、3.献立(食べたくなる、発達段階に合ったメニュー、伝えたい味、慣れ親しませたい味、生きた教材としての学校給食)、4.環境(安全で衛生的な調理環境、食べる場の雰囲気、喫食時間の確保、栄養士・調理師・教員との人間関係、児童間の人間関係、家庭との連携)といった目的を目指し、達成するために多様な取り組みが進められている。
(1)体験・交流をとおして心を豊かにする
新潟県魚沼市に中学1年生を参加させ、田植えと稲刈りを体験し、そのお米でコシヒカリ給食をつくる。就学前の保育園・幼稚園児が、小学校高学年の手ほどきにより給食を食べる。
(2)地域でとれる産物に親しむ(地産地消)
23区内で江戸川区に次いで生産量の多い足立区の小松菜を、JAの協力のもと給食の食材とする。
(3)食育を通して健康な身体を育む食べ物を知る(小・中学校)
全校で使える指導集を小・中学校別に作成し、どの学校でも食育ができるよう取り組んでいる。
(4)給食献立から日本の食文化を学ぶ
学年別給食レシピや月別レシピなどを作成し、日本食の文化を学ぶ。家庭への給食だよりにより、家庭でも給食のことを話し合ったり、調理したりできる。
(5)東京・足立区の給食室
レシピ集を本にして出版。平成25年度までに77,000部発行し、今でも売れている。
おいしい給食ランチ:区役所のレストランで、同じ献立を30食限定で販売。
(6)楽しく食べる喜びを分かち合う
給食時間をたっぷりとり、楽しく食べてもらう。
さや向きなどを体験し、その豆を給食の食材とする。
バイキング給食やセレクト給食の実施。
このような取り組みをおいしい給食推進事業と位置づけ、おいしい給食推進委員会を発足させ推進させている。
教育委員会では、学校給食係とは別に、おいしい給食係をつくり、学校、保護者、調理業者、生産者と一体となって取り組んでいる点が注目に値する。
特徴的な取り組みとしては、例えば足立区の健康寿命は、東京都の平均と比較すると2歳短いが、糖尿病の率が高いという点を注視し、野菜の日を月1回定め、学校給食で野菜をたっぷりとれるよう取り組んでいることも素晴らしいと感じた。
「おいしい給食」を目指す計画自体がたいへん綿密で、とても素晴らしい取り組が進められ、例えば残菜率もずいぶん低下してきて、取り組みの効果が出てきているというふうに思われる。
栄養士の中で、半数が1年更新の5年任期の非常勤栄養士である。その栄養士たちが、取り組みの中で意識が変化し、養護教諭等の先生との協力のもと、意欲的に取り組み始めたということである。
取り組みの計画や目標などは、他の自治体でも足立区と同じ内容のものはたくさんあると思う。足立区の優れた取り組みの特徴点としては、区の職員や栄養士をはじめ給食に携わる人たちの「おいしい給食」をつくるための意欲や人的協力関係にあるのではと感じた。
6月5日 北九州市調査
<所見>
函館市の自転車競争事業特別会計については、最近、単年度で黒字となることはあるものの、累積赤字を解消するまでには至らず、毎年のように繰上充用している。
かつての自転車競争事業特別会計は、収益を一般会計へ繰り出し、公共事業等の財源とするなど、函館市にとっても財源確保の手段になっていたが、近年は、残念ながらそういう状況ではなくなった。
しかし、平成20年度から包括委託が導入されたほか、現在の競輪場建設の際の起債償還も平成31年度で終了する予定であることを考えると、経営改善の可能性はまだあると考えられる。
そこで、総務常任委員会としては、収支改善に向けた今後の取り組みを考察するに当たり、他場を調査することとし、この度、北九州市の競輪事業を調査した。
<北九州市の競輪事業>
北九州市の競輪事業において、収支改善に係る収入増の取り組みの特徴的な点として、次の項目が上げられる。
(1)競輪祭の継続開催(年間4日、売上100億円)
(2)ナイター競輪に特化した開催(年間54日(F1・F2)、売上129億円)
(3)ミッドナイト競輪の開催(年間25日(無観客でインターネット投票)、売上21億円)
(4)臨時場外発売日数拡大、2場併設の継続(年間474日)
※昼開催分+ナイター開催分
これらにより、売り上げは平成24年度は223億円だったが、平成25年度は250億円となった。
今後の取り組みとしては、場外発売の拡大、ミッドナイト競輪の借上施行へ向けた環境整備が上げられている。
一方、経費縮減については、競輪実施事務の包括委託、投票所・売店・ファンバスなどの整理縮小に取り組み、開催収支の黒字化が図られたとされている。
函館市の状況を考察してみると、
<1 車券の売り上げ増について>
車券の売り上げ増のためには、ファンにとって魅力あるレースの開催や新たなファンの獲得、また車券購入の簡便さなどが求められる。これを踏まえると、次のようなことが考えられる。
(1)特別競輪等の開催
車券の売り上げ増を考えたときに、まず大幅増が期待できるのが、人気のある選手によるレースの開催ではないか。記念競輪や特別競輪の開催ということになるだろうか。小倉競輪場では、毎年11月に競輪祭が行われており、開催4日間で100億円の売り上げがある。ただし、これは小倉競輪場で開催されるものであり、他場も同じようにとはならない。函館でも、記念競輪や特別競輪が開催されれば、一定の売り上げが期待はできる。しかし、開催時期などからすると、実際に開催が可能なものは3つ程度であり、これらは他場からの開催希望もあるので、毎年の開催は難しい面はある。
北九州市のように競輪場が全天候型であれば、季節に関係なく自場でレースが可能となるが、建設費も相当なものと考えられ、起債の償還額と売り上げなどから考えると、簡単な話ではない。ちなみに北九州市の競輪場の建設費は約290億円とのこと(平成26年度の小倉競輪事業の予算規模は279億円)。起債の償還などの負担は財政に与える影響も大きいものと考えられ、例えば平成24年度の単年度収支は、▲632,392千円となっている。
(2)F1・F2競輪で売り上げを伸ばすために開催・発売の競合を避ける
これについては、函館開催のものを他場で発売してもらう際に、他の競輪となるべく競合しないようにする。
(3)ナイター競輪で夜もレースが楽しめ、車券が買える
これは小倉競輪場も実施しているが、函館市も自場開催は全てナイターであり、今のところ競合も少ないので売り上げには貢献していると考えられる。しかし、他場でのナイター競輪が増えると、その効果は薄れてしまうことが懸念される。
(4)インターネット投票の普及で車券購入を便利にする
本場の入場者数が減少しているが、その減少分を補う効果が期待できる。
<2 競輪場でイベント等開催による使用料収入増、入場料の徴収>
競輪の開催以外での収入として、イベント等の会場としての使用による収入が考えられる。しかし、競輪が開催されていない日時における競輪場の有効利用といった程度の使用が実際であり、莫大な収入は期待できるものではない。現行、テレシアターの利用が多いが、自場開催や他場の発売などが行われていれば使用できないため、年間でも50件程度、使用料も十数万円程度である。小倉競輪場でさえも、年間数百万円とのこと。
また、入場料については、小倉競輪場は一般の入場で100円を徴収している。これはいわゆるホームレスが占拠しないようにといった事情もあるようだ。函館は、法改正を契機に入場料は廃止した経過があり、さらに来場してもらいやすくすることを考えると、徴収することにはならないと思われる。
<3 支出の抑制策の強化>
函館競輪では包括委託が平成20年度から導入されている。従事員の雇用なども、当初は市が雇用していたが、現在は包括委託先の雇用とするなど、委託先の裁量可能部分を増やし、経営努力をしやすくする内容となってきている。
このほか、JKA交付金の率の減などによる効果額もある。
<まとめ>
以上、収支改善のための取り組みについて述べたが、特効薬はなく、物理的な環境なども限られる中で、函館の競輪事業において実際に可能な取り組みをいかに最大限のものとするかということが近道ではないか。
今後も、新たなファンを増やすことも視野に入れて、魅力ある競輪場、レースを追求しなければならない。
そういう意味では、来たくなる競輪場づくりも必要ではないか。北九州市の競輪場では、地元出身の有名選手の展示コーナーがあり、自転車やトロフィー、グッズなどが展示されていたが、来るだけでも楽しい、そしてさらにはちょっと買ってみようかという気になる、そんな競輪場づくりが課題となっているのではないか。
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