公開日 2014年03月27日
更新日 2021年12月14日
函館市議会議会改革報告書ー議会の機能を発揮するためにー
目次
(1) 地方自治を取り巻く環境
(2) 地方議会の役割
(3) 地方議会の抱える課題・問題点
(4) 他都市の事例
2 検討結果
(1) これまでの議会改革
(2) この度の「議会改革検討ワーキンググループ」設置の経過
(3) 今回の議会改革の視点
(4) 議会改革検討ワーキンググループの検討結果(総括表)
(5) 議会改革検討ワーキンググループの検討結果(個別事項)
3 おわりに
1 地方議会の役割と課題について
(1) 地方自治を取り巻く環境
地方自治については、憲法第92条に「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。」と規定されている。「地方自治の本旨」は、「住民自治」と「団体自治」の二つの要素で説明されるが、「住民自治」とは、地域の住民が地域的な行政需要を自己の意思に基づき自己の責任において決定することをいい、「団体自治」とは、国から独立した地域団体を設け、この団体が自己の事務を自己の機関によりその団体の責任において処理することをいう。
さらに、憲法第93条第2項では、「地方公共団体の長」と「議会の議員」については、住民が直接これを選挙することが定められている。このように地方自治体は、執行機関の長と議事機関である議会の議員をそれぞれ住民が直接選挙で選出する二元代表制をとっており、執行機関と議会は独立・対等の関係に立ち、相互に緊張関係を保ちながら協力して自治体運営にあたる責任を有している。
しかしながら、これまでは機関委任事務制度のもと、地方自治体の長は機関委任事務の執行者として国の一機関と見なされ、国の指揮監督下におかれていた。機関委任事務に関しては地方自治体独自の条例制定ができないほか、議会の権限の及ぶ範囲も大幅に制限されていたたため、国と地方の関係の見直しが求められていた。
このような中、第一次地方分権改革として、平成12年に地方分権一括法が施行され、機関委任事務制度の廃止と国の関与の見直しが行われたことで、地方自治体の自主性・自律性が飛躍的に拡大し、これに伴い、議会の権限の及ぶ範囲も大幅に拡大された。
こうした地方自治推進の流れや市町村合併の進展などの地方自治体を取り巻く環境変化に対応するために、第28次地方制度調査会において地方自治制度のあり方等が検討され、平成17年12月に、地方の自主性・自律性の拡大のあり方、議会制度のあり方に関する答申が出された。この答申を踏まえ、助役・収入役制度の見直し、議長への臨時会招集請求権の付与、委員会への議案提案権の付与など、地方の自主性・自律性を拡大することを目的として、平成18年9月に地方自治法が改正されたところである。
(2) 地方議会の役割
先に述べたように、我が国の地方自治体は二元代表制をとっており、その一翼を担う議会は、執行機関とは独立・対等の関係にある。議会には、その重要な機能として、地方自治体の基本事項を決定(議決)する団体意思の決定機能と、執行機関を監視・評価する機能の2つがある。
住民の直接選挙により選出される長と議会は、両者とも住民を代表する機関であるが、長が独任制であるのに対して、議会は複数の代表で構成された合議制の機関であることに特徴がある。したがって、議会は、その審議の場に多様な住民の意見を反映させ、審議の過程においてさまざまな意見を出し合い、課題や論点を明らかにしながら合意形成し、政策を決定していくことが期待されている。
団体意思の決定に関する議会の権限については、地方自治法第96条第1項において、条例の制定又は改廃、予算の決定、決算の認定など15項目が明示されているが、さらに必要に応じて議会の議決すべき事件を条例で定めることができる旨規定されており、議会の権限強化のためにその活用を求める声も多い。
執行機関の監視・評価に関する議会の権限については、地方自治法第100条に基づく「100条調査権」(当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。)や、地方自治法第98条第1項に基づく「検査権」(地方公共団体の事務に関する書類等を検閲し、首長等に報告を請求し、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる。)や同条第2項に基づく「監査権」(監査委員に対し、地方公共団体の事務に関し監査を求め、その結果の報告を請求することができる。)などが、制度的に保障されている。また、議員個人の権限として、当該団体の行政事務全般について口頭で執行機関の見解を求めることができる「一般質問」が認められており、執行機関を批判・監視するうえで重要な機能となっている。
一方、地方分権の推進によって地方自治体の自主・自律がより一層求められることとなり、議会の政策形成機能の充実が重要になっている。議会は、議案の提案・修正、意見書・決議による議会意思の表明など政策決定における大きな権限を有しているが、いずれも議会に与えられた権限であり、その行使には議決が必要である。つまり、議員同士の議論が不可欠なのである。合議体である議会では、議員同士が大いに議論することによって、地域の課題や民意の確認がなされ、これらの多様な意見を調整しながら合意形成に至ることで、より多くの住民が納得できる政策を形成することができるのである。
平成18年9月の地方自治法改正により、議長への臨時会請求権の付与、委員会への議案提出権の付与、専決処分の要件の明確化など、議会の権限が強化された。また、専門的事項に係る調査を学識経験を有するもの等にさせることができるようになるなど、今後は、議会の政策立案能力を向上させるためにも、こうした制度を積極的に活用していくことが求められている。
(3) 地方議会の抱える課題・問題点
二元代表制の一翼を担う存在である議会には、分権時代を迎え、団体意思の決定機関としての機能や執行機関を監視・評価する機能をより発揮していくことが求められていることは、先に述べたとおりである。こうした機能を発揮していくためには、議会は広く住民の意見や要望を把握し、それらを持ち寄りながら議論することにより、当該自治体の課題を明確にすることが必要である。
現在も、個々の議員は日頃の活動を通じて住民要望や行政課題を把握しているが、本会議や委員会の運営では、議員が個々に執行機関へ疑問点を質すことに終始しており、議員間の協議はほとんど行われていない。したがって、議会から議案等で政策を提案したり、議会として執行機関の提案に対する積極的な改善・修正を行うことが少なく、執行機関の提案を議決するという受け身の状態にあるとの批判も多い。
一方、執行機関は、各種施策の策定や実施に際して、パブリックコメントを募集したり、各種アンケート・調査等を通じて広く住民意見を聴取する制度を取り入れている。さらに、最近では、必要に応じてその効果等について評価を行うことも珍しいことではなくなっている。このように、執行機関において意見集約から企画立案、事業実施、評価までの行政運営の一連のサイクルを完結させる状況が促進されると、議会の政策提案や監視機能をどのように発揮するかが大きな問題となる。議会が単に執行機関の政策等を追認しているだけの存在となれば、「議員数が多過ぎる」、「報酬が高過ぎる」などの批判や、ひいては「議会は不要」との極端な意見も出てくるものと考えられる。地方議会の中には、この状況に危機感を持って、積極的な改革の試みを始めたところもある。
(4) 他都市の事例
【栗山町議会の取り組み】
1 議会改革に対する考え
議会は、議員による討論の場であり、自由闊達な議論を通じ、町政における課題、論点、争点を町民に明確にする責務がある。その機能を十分に発揮するため、平成13年から、議会改革に取り組み、その改革の集大成として、平成18年5月18日に全国初となる「議会基本条例」を制定した。
2 主な取り組み
- 財政システムを理解できる議員となるための取り組み
- 提案権、修正権を活用することで監視型議会からの脱皮
- 議員が直接地域に出向き報告を行う「議会報告会」の実施
- 議員同士の議論の促進
- 理事者への反問権の付与
- 議会運営の規範を定めた「議会基本条例」を全国初で制定 など
【登別市議会の取り組み】
1 議会改革に対する考え
現在の議会は受け身で、政策の問題点を明らかにする議論がなく、政策提案も少ない。地方分権が進む中で、議会がその機能を発揮し住民の負託に答えるため、議会の活性化を図る必要がある。
2 主な取り組み
- 議場・委員会室へのパソコン持込み許可
- 議会費の節減(委員会行政視察の隔年実施と随行の廃止、海外視察の凍結、政務調査費の削減、費用弁償の削減)
- 代表質問を廃止して一般質問へ一元化
- 一般質問における「お願いします。要望します。」発言の自粛
- 常任委員会の数の削減(4委員会から3委員会へ)
- 議員の調査研究を充実させるため定例会開催回数を減少(4回から3回へ)
- 議会基本条例の策定の検討 など
【四日市市議会の取り組み】
1 議会改革に対する考え
平成17年1月に「自治基本条例」を市議会では全国初となる議員提案によって制定した。二元代表制の一翼を担う議会として、議員提案による活発な条例制定や議会の活性化、市議会モニター、シティ・ミーティングの実施により議会への市民参画を推進している。
2 主な取り組み
- 市政活性化推進等議員懇談会の設置
- 議員政策研究会の設置
- 議員提案による活発な条例制定
- 改正への取り組み
- 一問一答方式の採用、質問者席の設置(対面式)
- 正副議長選挙への立候補制の導入
- 事務局体制の整備
- 自治基本条例(理念条例)の制定
- 議会関係例規の体系化
- 議会への市民意見を聴取する「市議会モニター制度」の導入
- 議会活動を報告する「シティ・ミーティング」の開催 など
【三重県議会の取り組み】
1 議会改革に対する考え
地方行政が大きな変革期を迎える中で、二元代表制の趣旨から政策立案能力を高めていくことが重要となる。住民が参加しやすい開かれた議会や新しいこと、困難なことに果敢に挑戦する議会を築き上げ、分権時代を先導する議会をめざす。平成18年12月に都道府県議会としては全国初となる「議会基本条例」を制定した。
2 主な取り組み
- 全員協議会の一般公開
- 「県民ミーティング」の開催
- 「二元代表制における議会の在り方検討会」の設置
- 執行部との協働によるプロジェクトチームの設立
- 議長の私的諮問機関の設置
- 「三重県議会改革推進会議」の設置
- 「全国自治体議会 議会改革推進シンポジウム」の開催
- 事務局による議会サポート体制の充実(政務調査課の設置、政策法務担当の設置、衆議院・参議院法制局への研修派遣) など
2 検討結果
(1) これまでの議会改革
当市議会では、平成11年7月に議会運営委員会の内部に「議会改革検討委員会」を設置し、「開かれた議会、わかりやすい議会」を目指し、集中的に改革に取り組んだ経緯がある。
その主な取り組みとしては、
- 質問者の時間割の事前公表(平成13年2月) 本会議の質問・質疑における発言時間を答弁を含む往復制にし、予め発言予定時間を申し出ることとした。
- 地域FM放送での議会広報(平成13年2月)
- ホームページの開設(平成13年4月)
- 手話通訳・要約筆記の実施(平成14年6月)
- ホームページでの会議録検索(平成14年7月)
- 一問一答制(再質問から)の導入(平成14年2月)
- 委員会行政調査報告のホームページへの掲載(平成16年5月)
- その他、本会議ビデオテープの貸し出し、広報委員会の設置など
これらの改革は、議会活動の市民広報や傍聴の促進に主眼を置いたもので、現在も実施しており、一定の効果を上げているところである。
(2) この度の「議会改革検討ワーキンググループ」設置の経過
平成12年の地方分権一括法の施行により本格的な分権時代に入ったが、一方で、地方財政は税収入の減少や国の三位一体改革による地方交付税の削減などによって非常に厳しい状況にあり、当市においては「函館市行財政対策実施計画」を策定し、職員定数の大幅削減など行財政改革に取り組んでいる。
このような中、平成18年1月31日の議会運営委員会において、「市職員が給与や定数を削減する中、議会も経費の節減に協力すべき」との提案があり、平成18年4月から政務調査費を月額7万円から5万円へ減額することを決定した。その後、政務調査費にとどまらず、事務局体制の縮小を見据えた議会運営や分権時代に対応して議会の機能をより発揮するための運営のあり方など、さらなる議会改革が必要であるという考えで一致し、平成18年2月22日に議会運営委員で構成する「議会改革検討ワーキンググループ」を設置し、議会改革について検討することとした。
検討項目については、各会派・議員の意見・要望をとりまとめ、1.本会議に関すること、2.委員会の運営に関すること、3.議会費に関すること、4.その他、の4つの大項目について検討することとし、その中で、一問一答制、投票システムの導入、常任委員会数の見直し、委員同士による議論・協議の促進、行政調査、陳情の処理方法など具体的な事項について検討していくこととした。
(3) 今回の議会改革の視点
これまで述べたように、これからの地方自治体は、厳しい財政状況の中で自主・自律の道を歩んでいかなければならないが、二元代表制の一翼としての議会は、財政問題はもとより、地方自治体の抱えるさまざまな課題を執行機関と共に克服していかなければならない。そのためには、議会に与えられた大きな権限と役割を最大限に発揮することが必要である。
この度の検討に当たり、議会改革に先進的に取り組んでいる栗山町議会、登別市議会、四日市市議会、三重県議会を調査したが、いずれの議会においても、議会と市民が協働しながら能動的に活動することを目標とし、そのためには、「二元代表制の一翼を担う機関として、議員同士が議論する過程で諸課題を住民に明らかにし、政策を決定する」という議会制度が持つ本来の機能や役割に着目し、これらをどのように実現するかという視点で改革に取り組んでいた。
そこで当市議会においても、この度の議会改革では、目新しい改革にとらわれず、質疑や質問の意義の確認や委員会における委員同士の協議の促進、所管事務調査のあり方など、議会制度や法令の原点・趣旨に立ち返り、「議会本来の機能や役割をいかに発揮するか」に視点を置き検討を行った。
(4) 議会改革検討ワーキンググループの検討結果
1 本会議の運営に関すること
(1) 代表質問・一般(個人)質問・質疑
1 予算議会(2月定例会)の運営
・代表質問の意義(「市政執行方針や教育行政執行方針に対する各会派からの質問」)を明確にするため、改選期の2月定例会では代表質問を行わないこととする。
2 質疑と一般質問の取り扱い
・議会の機能と権限を十分に発揮するため、議案審査の手続きの一環である質疑と、議案に関わらず行える一般質問を明確に区分することとする。
3 質疑のあり方について
・質疑の意義(「議案の疑義を解明するものであり、意見や賛否等を表明するためのものではない」)を徹底する。
4 一般質問のあり方について
・一般質問の意義(「議案に関わらず行政全般について執行機関の所信をただす」)を徹底する。
5 出席理事者の範囲
・正副議長選挙など、説明が必要ない場合は、理事者の出席を求めないこととする。
(2) 一問一答制の導入
・今後も検討を続けることとする。
(3) 投票システムの導入
・今後も検討を続けることとする。
2 委員会の運営に関すること
(1) 常任委員会の一斉開催の見直し
・現行どおりとする。
(2) 常任委員会の数の見直し
・改選後は3常任委員会とする。
・定例会毎の予算委員会の設置については、今後も検討を続けることとする。
(3) 発言時間のあり方 および (4) 委員同士による議論・協議の促進
・委員会の議案提案・修正権など、政策立案機能を発揮するため、委員同士協議する場を設ける。
・提案に対して修正や撤回を求める発言があった場合は、委員全員で協議をし、委員会として意思決定をする。
・委員会の意見調整については原則として公開で行うこととする。
・簡明な発言に努めるよう徹底する。
(5) 閉会中の委員会のあり方
・定例会提出予定案件の委員会は開催しないこととし、資料の配付で対応する。
・政策立案機能などの委員会の機能を発揮するため、現在の理事者からの報告中心の委員会運営を改め、閉会中調査事件は、特定の事件について、理由を付して議決することとする。
・理事者からの報告事項については、原則として資料の配付で対応する。
(6) 閉会中の委員会記録の逐語化
・従来どおり要点記録とするが、今後も検討する。
3 議会費に関すること
(1) 調査関係
1 政務調査費
・月額5万円とする。(平成18年4月から実施済み)
2 海外行政調査
・改選後も、当面の間凍結することとする。
3 個人行政調査
・改選後も、当面の間凍結することとする。
4 議会だより
・市民の関心を高めるため、一般質問の内容等を新聞に掲載し、事前広報を行うこととする。
・事後発行の議会だよりについては、掲載内容を精査し、総体で経費節減が図られることとなる。
5 ホームページ等のあり方
掲載内容等は従来どおりとするが、必要に応じ見直しを図ることとする。
(2) 議員の待遇関係
1 議員報酬
・現状どおり特別職報酬等審議会に委ねる。
2 費用弁償
・現行どおりとする。
3 駐車場の有料化
・現行どおりとする。
4 議員の定年制
・定年制に関する申し合わせ等は行わない。
4 その他
(1) 意見書について
・現行どおりとする。
(2) 陳情の処理方法
・意見書の提出を願意とする陳情を委員会に付託しないこととする。
(3) 議員連盟の事務・事業
・一部、事務局で行ってきたが、改選後は所属する議員が執り行うこととする。
(5) 議会改革検討ワーキンググループ検討結果(個別事項)
1 本会議の運営に関すること
(1)−1 予算議会(2月定例会)の運営について
現状と課題
・予算議会となる2月定例会は、市長の市政執行方針が発表され代表質問を実施している。骨格予算となり市長の市政執行方針の発表がない改選期の2月定例会においても、代表質問を実施する必要があるか。
見直し結果
・代表質問は、「市政執行方針や教育行政執行方針に対する各会派からの質問」であることを明確にし、改選期の2月定例会では代表質問を行わないこととする。
(1)−2 質疑と一般質問の取り扱いについて
現状と課題
・当市では、議案に対する質疑と一般質問を一括して行っている。
・質疑とは、議案審議の一環として、議案に対する疑義を解明するために行われるものである。また一般質問とは、議案に関係なく、行政全般について執行機関の所信をただすためのものである。このように質疑と一般質問はそれぞれに重要な役割を持っている。
・一括で行うことによりそれぞれの役割が薄れ、本会議や委員会における質疑と代表質問、個人(一般)質問の内容に違いがなくなっており、議会の議決権や、議員の一般質問権の行使が十分にできていない状況にある。
・除斥を要する議案がある場合に、除斥対象の議員が一般質問を行えなくなる。
・一般質問の実施中など緊急に議案が追加された場合、既に発言を終えた議員の質疑の取り扱いや、通告の仕方が複雑になる。
見直し結果
・議会の機能と権限を十分に発揮するため、議案審査の手続きの一環である質疑と議案に関わらず行える一般質問を明確に区分することとする。
(現状) 提案説明→一般質問・質疑→委員会付託→付託委員会→本会議採決
(変更後) 提案説明→質疑→委員会付託→一般質問→付託委員会→本会議採決
(1)−3質疑のあり方について
現状と課題
・質疑は、議案等に対する疑義を解明するために行われるものだが、自己の意見や賛否を表明する例が見られる。
・疑義の解明のためというには、一人当たりの持ち時間が長すぎる状況にある。
・報告事項に対する質疑を行っている議会は少ない。
見直し結果
・一般質問との区別を明確にするため、質疑の意義「議案等の疑義を解明するためのものであり、自己の意見や賛否等を表明するためのものではない」ことを徹底する。
・発言時間の短縮を図ることとする。
・報告事項は提案案件ではないことから、今後報告事項に対する質疑は行わないこととし、ただすべき事項がある際は、一般質問の中で行うこととする。
(1)−4一般質問のあり方について
現状と課題
・行政全般について執行機関の所信をただすという質問本来の目的が曖昧になっている。また、単に事業内容を確認するだけの質問もあり、理事者の所信を引き出せていない。
・一括質問、一括答弁方式で実施しており、傍聴者が内容を把握するのが難しい。
・現状一人当たりの質問時間が長く、質問・答弁とも冗長になりがちである。
見直し結果
・一般質問の意義「行政全般について執行機関の所信をただすためものである」ことを周知徹底する。
・単に事業内容を確認するだけの質問を自粛するほか、簡便な発言を心がけるなど発言の効率化をはかることとする。
(1)−5 出席理事者の範囲
現状と課題
・議会側から具体的に範囲を定めての理事者への出席要請は行っていないが、基本的に全ての理事者が本会議に出席している。
・地方自治法では、説明のため議長から出席を求められた理事者が出席すると規定されている。
・議会内人事の際や、質問や質疑の内容に直接関係のない理事者も出席している。
見直し結果
・正副議長選挙など、説明が必要ない場合は、理事者の出席を求めないこととする。
(2) 一問一答制の導入について
現状と課題
・2回目の質問からは自席で行っており一問一答も可能となっているが、初回の質問は登壇して一括質問・一括答弁方式で実施しているため、傍聴者にとって内容の把握が困難となっている。
見直し結果
・初回からの一問一答方式の導入について、今後も検討を続けることとする。
(3) 投票システムの導入について
現状と課題
・現在、本会議の採決は、起立による採決を基本としているが、実際には各会派の賛否状況を事務局で確認し、それに基づいて議事次第を作成している。
・そのため、事前確認と違う採決態度を示す議員がいた場合、会議の運営上、速やかな対応が出来ないケースがある。
・起立による採決では、個々の議員の態度が、市民から見てわかりにくい。
見直し結果
・投票システムの導入経費等も含めて、今後も検討を続けることとする。
2 委員会の運営に関すること
(1) 常任委員会の一斉開催の見直し
現状と課題
・今後の行財政改革の実施により事務局職員が削減される予定であり、定例会提出予定案件や付託委員会の一斉開催が困難になる。
・一斉開催の場合は、議員が他の常任委員会の傍聴をすることが、ほとんどできない。
見直し結果
・常任委員会数が4から3に減ったことから、現行どおりとする。
(2) 常任委員会の数の見直し
現状と課題
・4常任委員会の所管する部局数や閉会中の委員会開催数にばらつきがあることから、各委員会の所管部局や常任委員会の数の見直しが必要である。
・事務局体制が縮小された場合、4常任委員会の一斉開催が困難になる。
見直し結果
・常任委員会の数を3委員会に減らすとともに、所管する部局の見直しを行うこととする。
・議員は、それぞれ一つの常任委員となるものとし、複数の常任委員会へは所属しないものとする。
このことにより、
・交渉団体(3名以上)である会派は、全ての常任委員会に所属できる。
・事務局体制が縮小しても、常任委員会の一斉開催が可能である。
・所管の幅が広がり、多方面からの議論が可能になる。
・所属委員の数が増え、多方面からの議論が可能になる。
・4年間の任期中に関与できる部局が、現在の2分の1から3分の2に増える。
○補正予算の委員会審査
現状と課題
・補正予算を各常任委員会に分割付託しているため委員会としての修正権が行使できない。
見直し結果
・定例会毎の予算委員会の設置については、今後も検討を続けることとする。
(3) 発言時間のあり方、(4) 委員同士による議論・協議の促進
現状と課題
・委員会において、一人で長時間にわたり質疑をする例がある。議論が平行線をたどっている場合が多く、他の委員の発言の機会を奪うなど、委員会の審査が非効率的になっている。
・市議会が会派制を採っているにもかかわらず、発言時間の制限のない現行制度では、会派所属委員と無所属の委員が同じ条件で発言が出来るなど、委員会においては、会派に所属していることのメリットが打ち出されていない。
・現状の委員会は、個々の委員の理事者に対する質疑のみで終了しており、委員同士の協議・議論がほとんど行われていない。
・このため、委員会としての意思決定に至るまでの経過が市民にわからないほか、理事者にとっても、委員会が執行機関に何を求めているかがわからない状況にある。
・特に付託委員会では、採決前の意見調整を非公開で行っており、意思決定の過程が不明瞭になっている。
・地方自治法改正により委員会として議案を提出することが可能となったが、その前提として委員同士の協議が必要であり、委員同士の議論や協議の促進が強く求められている。
見直し結果
・委員会の議案提案・修正権など、委員会の機能を十分に発揮するため、委員同士協議する場を設けることとする。
・提案に対して修正や撤回を求める発言があった場合は、委員全員で協議をし、委員会として意思決定をする。
・委員会の意見調整については、原則として公開で行うこととする。
・効率的な運営のため、簡明な発言に努めるよう徹底する。
・上記により、委員会の意思とその決定過程が、市民や理事者に明確になる。
(5) 閉会中委員会のあり方
現状と課題
○閉会中の活動について
・他都市と比較して極めて閉会中委員会の開催回数が多く、会議時間も長い。
・非効率的な運営により委員の調査の機会や理事者の執務時間に影響があり、より効率的な運営が求められている。
・所管事務調査は委員会に与えられた権限であり、政策立案をその本来の目的としているが、現在は理事者からの報告事項に対する委員個人の質疑が中心となっており、委員会の機能や権限が十分に発揮されていない。
○所管事務調査について
・議会は会期中に活動するものであり、委員会の所管事務調査についても会期中に行うことが原則である。
・所管事務調査を行う場合には、事項、目的および期間等を会期中に議長へ通知することが義務づけられているが、行っていない。
・所管事務調査は、委員個人ではなく委員会に与えられた権限であるが、委員個人の調査事項を委員会の議題にすることもあり、その際に質疑がほとんど行われない場合もある。
○閉会中調査事件について
・閉会中の調査事件については、議会の議決により付議された特定かつ具体的な案件でなければならないが、包括的かつ抽象的な項目となっている。
・閉会中の調査については、継続調査の理由を付して議長に申し出るように義務づけられているが、行われていない。
○定例会提出予定案件について
・定例会提出予定案件を理事者に報告させることは、二元代表制の趣旨に反する。
見直し結果
○所管事務調査について
・所管事務調査については、その具体的な事項、目的および期間等をあらかじめ議長に通知する。
・所管事務調査の結果については、委員会としての意見を付して本会議で報告し、具体策につながるようにする。
○閉会中調査事件について
・閉会中の調査事件については、継続して調査をすることが必要である「特定の事件」について、その理由を付して議決することとする。
○閉会中の活動について
・継続調査事件に該当しない理事者からの報告については、資料の配付により行うこととする。ただし、委員長が口頭での報告を必要と判断した事項については、事実行為として報告することを認める。
・委員会の議題については、委員全員が議論に参加できるように、予め委員会として閉会中調査事件のうちから項目を明記して招集する。
○定例会提出予定案件について
・定例会提出予定案件についての委員会は、開催しないこととする。
上記の実施により、重要案件を効率的に審査出来るようになるほか、所管事務調査を通じて委員会としての意思決定が可能になる。これにより委員会本来の機能が強化され、その権限を発揮することが出来る。また、市民に対しても委員会の役割を明確にすることができる。
(6) 閉会中の委員会記録の逐語化
現状と課題
・閉会中の常任委員会の記録は、会議の要点記録となっており、答弁内容は記載されていない。
・答弁等の審査内容を知るためには録音テープを聴かなければならず、議員、理事者に対する録音テープ貸出件数も多い。
・録音テープの保存期間が5年間のため、5年以降は審査内容が確認ができない。
・開催数、開催時間は閉会中委員会の方が圧倒的に多い。
・記録は本庁舎文書公開コーナーおよび7支所には配布していない。
見直し結果
・従来どおり要点記録とするが、経費等も含めて今後も検討する。
3 議会費に関すること
(1) 調査関係 2 海外行政調査
現状と課題
・在任特例期間中は自粛となっている。
見直し結果
・改選後も、当面の間凍結することとする。
(1) 調査関係 3 個人行政調査
現状と課題
・在任特例期間中は自粛となっている。
・委員会行政調査や政務調査費による調査が可能である。
・他都市では個人行政調査の制度を有するところは少ない。
・地方自治法改正により、平成14年度から議員の出張は原則として議会の議決を要する議員派遣制度となり、議員個人ではなく議会として調査すべきものとなったため、当市議会の制度の見直しが必要である。
見直し結果
・改選後も、当面の間凍結することとする。
(1) 調査関係 4 議会だより
現状と課題
・議会の閉会後ではなく、事前に議会日程等の情報を市民に伝える方法はないか。
・発行経費を節減する方法はないか。
見直し結果
・市民の関心を高めるために、本会議日程や一般質問の項目等を事前に新聞掲載し、事後に発行する議会だよりは掲載内容を精査して、総体で経費節減を図ることとする。
※ 見直しによる効果額 平成20年度以降 毎年約300万円
(1) 調査関係 5ホームページ等のあり方
現状と課題
・議会の内容をホームページに掲載することで広く周知できるが、インターネットの普及が課題である。
・「わかりやすく」、「見やすく」作成する必要がある。
見直し結果
・随時見直しを図ることとする。
(2) 議員の待遇関係 1 議員報酬
現状と課題
・報酬月額については、市長が函館市特別職報酬等審議会に諮問し決定することとなっている。
・特別職の報酬や一般職の給与が引き下げられている中、議員報酬の見直しも検討すべきである。
見直し結果
・現状どおり函館市特別職報酬等審議会に委ねることとする。
(2) 議員の待遇関係 2 費用弁償
現状と課題
・近年、全国的に廃止する自治体が増えている。
見直し結果
・現行どおりとする。
(2) 議員の待遇関係 3 駐車場の有料化
現状と課題
・現在、議員駐車場に関しては、本庁舎付設の駐車場を無料で提供しているが、公有地の有効活用や費用弁償との関係などから、駐車場料金を徴収すべきとの意見がある。
・一般来庁者用の駐車場が慢性的に不足している。
・他都市でも駐車場の議員への優遇措置が問題となっているケースがある。
見直し結果
・現行どおりとする。
(2) 議員の待遇関係 4議員の定年制
現状と課題
現在、年齢等に関する規制はないが、
・新人議員が当選しにくくなる。
・首長においては、近年、条例により多選を禁止する自治体が増えている。
・政党においては、国会議員の公認にあたり年齢制限を設けているところがある。
見直し結果
・定年制に関する申し合わせ等は行わない。
4 その他
(1) 意見書について
現状と課題
・市議会は、地方自治法に基づき、市の公益に関する事件につき意見書を国会または関係行政庁に提出することができる。
・当市の意見書提出件数は、他都市に比べ極めて多い。
・意見書の乱発による価値の低下が指摘されている。
・外交問題は地方団体の事務ではなく、政府・国会で論議する事項であり、地方議会で扱う案件になじまない。
・意見書の価値を高めるため、議会運営委員会で全会派一致となったものを本会議に上程する必要があるのではないか。
見直し結果
・現行どおり、意見書案の提出に制限は設けないこととする。
(2) 陳情の処理方法
現状と課題
・審査の対象となる陳情(市の権限に属する事項)について、審査を十分行う必要がある。
・委員会付託される陳情が多く、十分に審査することが困難である。
・審議未了数が多い。
・陳情提出者は、機を見て提出するものであるから、早期に結果を求めている。
・陳情数のうち、約半数が「意見書提出が願意のもの」である。
・「意見書提出が願意のもの」についても、他の陳情と同じく所管委員会に付託している。
・陳情を付託された委員会から意見書を提出した件数は少ない(全会一致が条件)。
・意見書は、議員提案することができる。
見直し結果
・「意見書提出が願意のもの」については、所管委員会に付託せずに、受理した都度に所管委員会および各会派へ配付する。
・意見書案の提案は議員2名で可能であり、委員会審査を経るよりも速やかに陳情者の願意を反映できる。
(3) 議員連盟の事務・事業
現状と課題
・現在、函館市議会では「議員会」及び「国際水産・海洋都市構想推進議員連盟」、「森林・林業活性化議員連盟」、「日中友好議員連盟」が設立されており、総会や各種事業の開催、会計や書類保管等の事務は事務局職員が行っている。
見直し結果
・事務局体制縮小に伴い、改選後は所属する議員が執り行うこととする。
・各議員連盟については、その必要性について再検討する。
3 おわりに
平成18年2月22日に議会改革検討ワーキンググループが発足して以来、先進議会の調査も行いながら、10月31日の最終の会議まで、延べ14回にわたり会議を開催した。一問一答制や投票システムの導入など、一部、今後も検討すべき課題を残したものの、議会制度の原点に一度立ち返り検討することで、議会本来の姿を再認識することができた。
一つ目は、議会本来の機能と役割を発揮することである。議会は二元代表制の一翼を担う機関として、極めて大きな権限を有している。そして、その権限を行使するには、合議体であるが故に議決を経ることが要求される。しかし、一方では、議決に至るまでの議論により、問題点が明らかになり、よりよい政策決定ができるという大きな利点がある。議会制度は、権力の一極集中を防ぎ、住民の多様な意見を民主的に反映するための、人類の長い歴史の中で培われた素晴らしい制度である。
二つ目は、政治倫理の確立である。議会は地域の未来を託されており、その構成員たる議員は高い倫理観と使命感を持ち、住民から信頼される存在であることが求められる。その思いが、同じく未来を託されている子ども達に連綿と受け継がれるなら、議会はその地域にとって大きな存在になる。
最後に、現在、各地の議会において議会基本条例の策定の動きが見られるが、当市議会においても、条例によって上記の2点を住民に明言することは、今後検討していく価値があろう。
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