公開日 2023年06月26日
概要
函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区は,函館山山麓から港へ向かう斜面地に広がる西部地区の東端に位置しています。
旧税関(現海上自衛隊函館基地)敷地に近い港際から元町公園に至る,幅36メートル,長さ270メートルの坂道である基坂から,旧函館区公会堂の一画,さらにハリストス正教会の一画を経て大三坂を下り,港際の煉瓦倉庫群の一角に至る延べ約1.5キロメートルのコの字形の道筋に沿った町並みです。
函館は,古くから天然の良港として知られ,海産物交易の集散地として栄えてきました。寛政11(1779)年,幕府はロシアの南下を脅威と捉え,蝦夷地を直轄領とし,函館に奉行所を設置しましたが,この場所が現在の伝建地区の中となっており,明治以降は,開拓使函館支庁が置かれるなど,政治,経済,文化の中心地となってきた場所です。
幕末期の函館が大きく変化をしていくのは,開国による諸外国文化の流入であり,安政元年(1854),日米和親条約の締結により,幕府は函館と下田の開港を決定し,乗組員の休養や物資の補給地として外国船が函館港に盛んに入港し始めるようになります。
その後,米,蘭,露,英,仏の欧米5カ国と修好通商条約が締結され,安政6年(1859)に,函館は長崎,横浜とともにわが国最初の対外貿易港として開港します。この影響により,領事館が新築されたり,キリスト教会が建てられるなど,異国情緒豊かな町並みが形成されたのです。
また,函館のまちは,しばしば大火に見舞われていますが,明治11年,12年に発生した大火に伴う復興事業により,函館の市街地の構造は根底から変わることになります。防火線街路として基坂,二十間坂を幅員20間(約36メートル)で拡幅整備したほか,直通街路を整備し,矩形の整然とした街路となり,現在の伝建地区の原形は,この時につくられたものです。それ以降,街区形態はほとんど変化がない状態となっています。
明治以後もいくつかの大火がありましたが,大火後の復興でも,日本の伝統文化を表す和風の民家等のほか,開港以来の諸外国文化の流入とその影響を受けて,洋風の建物あるいは和洋折衷方式の建物が数多く建てられ,現在もその多くが当時の姿を残しています。
このように元町末広町伝建地区は「函館発祥の地」であり,函館が最も著しい繁栄を遂げた明治・大正・昭和初期に形成された町並みが概ねそのままの形で継承され,これらが坂道,街路等と融合しながら,異国情緒豊かな町並み景観を呈しており,市民共有の貴重な財産となっています。
伝統的建造物群保存地区の範囲
伝統的建造物群保存地区の範囲は,弥生町,大町,末広町,元町および豊川町の各一部で,面積約14.5ヘクタールとなっています。
伝統的建造物群保存地区の特性
伝統的建造物群保存地区は,重要文化財の旧函館区公会堂や函館ハリストス正教会復活聖堂などの文化財建造物をはじめとして,明治から昭和の初期にかけて建築された和風,洋風,さらには和洋折衷様式の建築物が建ち並び,函館らしい伝統的な町並みを形成しています。こうした町並みも,区域の性格や地形上の差異,さらには町並みを構成する建築物の外観のまとまりなどにより,次の二つの区域に分類することができます。
1 旧函館区公会堂周辺および函館ハリストス正教会復活聖堂周辺の区域
この地区は,かつての政治,文化の中心地であった歴史性を表す洋風の公共建築物や,開港による諸外国文化の流入を端的に表す宗教建築物などが建ち並び,函館を代表する特有の町並み景観を形成しています。また,この区域は,一般民家においても,洋風の住宅や和洋折衷の住宅,和風の住宅などが混在しており,良好な住宅地が形成されている地域です。
2 金森倉庫群周辺の区域
かつての港町としての繁栄をしのばせるレンガ造りの倉庫が建ち並び,他に類を見ない函館特有の町並み景観を形成しています。また,倉庫群周辺には,旧函館郵便局の建物などの業務施設のほか,函館の歴史と文化を伝える和洋折衷の元海産商の住宅などが数多く存在しています。
函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区の保存に関する計画
函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区の保存に関する計画.pdf(2MB)
函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区の経過
昭和57年度
- 函館市西部地区伝統的建造物群調査(元町・末広町)(文化庁補助事業)
昭和58年度
- 函館市西部地区伝統的建造物群調査(弁天町・弥生町)(文化庁補助事業)
- 函館市西部地区住環境整備調査(建設省補助事業)
昭和61年度
- 1月20日
(仮称)函館市歴史的景観条例検討委員会の設備(学識経験者・町会長・団体役員38名)
昭和62年度
- 7月17日から3月4日
地元説明会の実施(5回に分けて延べ24日間開催)、市の広報誌「市政はこだて」による啓発活動(17回連載)、建築関係団体等に対する説明会(延べ5回開催)
昭和63年度
- 4月1日
「函館市西部地区歴史的景観条例」の施行 - 12月19日
「伝統的建造物群保存地区」の決定(都市計画決定)、「伝統的建造物群保存地区保存計画」の策定→《許可制》、「伝統的建造物群保存地区(約14.5㏊ 伝統的建造物 89件)」
平成元年度
- 4月1日
教育委員会に文化財課伝統的建造物群保存係を設置 - 4月21日
重要伝統的建造物群保存地区の選定<全国で29番目>、伝統的建造物群保存地区の保存に関する補助金交付要綱の制定、歴史的景観地域に関わる融資の斡旋に関する要綱を制定 - 3月31日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 75件)
平成2年度
- 4月1日
地方税法による,伝統的建造物の固定資産税・都市計画税の非課税措置 - 12月28日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 76件)
平成3年度
- 3月31日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 75件)
平成4年度
- 11月11日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 76件) - 3月26日
「函館市西部地区歴史的町並み基金の設置および管理に関する条例」の制定
平成5年度
- 4月1日
指定建造物等の防寒改修に係わる補助金交付要綱の制定、指定建造物等の取得等に係わる補助金交付要綱の制定、指定建造物等の維持管理費に係わる補助金交付要綱の制定 - 5月25日
函館市西部地区歴史的町並み資金運営委員会の設置(学識経験者・団体役員・指定建造物等の所有者等15名) - 6月29日
「函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区内における建築基準法の制限の緩和に関する条例」の制定
平成6年度
- 12月14日から12月22日
「(仮称)函館市都市景観条例」の基本的な考え方についての市民説明会の開催(各町会,建設業界,市民団体など対象に7回開催) - 3月22日
「函館市都市景観条例」を制定
平成7年度
- 4月1日
「函館市都市景観条例」の一部を施行(都市景観形成基本計画の策定,函館市都市景観審議会の設置) - 1月8日
「函館市都市景観条例」の全面施行
平成10年度
- 4月1日
伝統的建造物群保存地区内の敷地に係る固定資産税の減免措置
平成12年度
- 1月24日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 77件)
平成13年度
- 5月28日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 76件)
平成14年度
- 5月8日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 76件)
平成15年度
- 4月1日
規則の一部改正(民間事業者による信書の送達に関する法律の制定)、北海道屋外広告物条例による屋外広告物禁止地域の指定
平成16年度
- 6月9日
規則の一部改正(電気通信事業法改正)
平成17年度
- 4月1日
規則の一部改正(文化財保護法改正) - 6月8日
保存計画の一部改正(助成制度の変更)
平成19年度
- 3月6日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 75件)
平成24年度
- 10月10日
保存計画の一部改正(許可基準等の変更)
平成28年度
- 7月13日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 77件)
令和元年度
- 5月27日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 76件)
令和3年度
- 2月4日
保存計画の一部改正(伝統的建造物 77件)
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