公開日 2014年03月27日
更新日 2021年12月14日
経済常任委員会行政調査
平成18年4月26日水曜日から4月28日金曜日
久留米市調査
<所見>
「都市エリア産学官連携促進事業について」
調査の第1日目は、久留米市にあります(株)久留米リサーチ・パークでした。
函館市は将来のまちづくりとして、国際水産・海洋都市を目指して、現在鋭意取り組んでいるところです。このような取り組みは全国的に多種多様であり、自治体間の競争がはじまっています。そこで、久留米市が推進している事業が文部科学省の「都市エリア産学官連携促進事業」に採択され、地域として発展的な取り組みをしている状況について調査をしました。
まず、(株)久留米リサーチ・パーク関係者から事業内容等の概略説明と経過、そして、現在取り組んでいる事業が文部科学省の「都市エリア産学官連携促進事業」に採択され、地域として発展的な取り組みをしている状況について、説明がありました。
その後、当市の経済委員との質疑応答があり、各委員からは、事業推進に当たっての詳細な経過、福岡県との協力体制(財政、人材、施設の建設等々)と棲み分けについて、また、進出している企業との共同研究の問題点、事業を推進するための連携や組織体制、特許を出願するときの手続き、更に今後の目標等、積極的な議論が展開されました。久留米市が鋭意取り組んでいるバイオ産業の発展を目的とした内容は、福岡県と久留米市が連携した「久留米メディカルバイオクラスターの形成」であり、中心は久留米大学・九州大学・福岡県工業技術センター生物食品研究所等により行われ、その主なものとして、
1免疫ペプチドによるテーラーメイド型医薬品の開発
・C型肝炎ウイルス新規治療薬の開発
・進行膵臓癌、再燃前立腺癌のテーラーメイド・ぺプチドワクチンの開発
2異分野融合によるテーラーメイド型医薬品の開発
・肝硬変治療薬の開発
3臨床試験に裏付けられた疾病予防機能性食品の開発
・終末糖化産物による機能性食品の開発
等々があり、運営は久留米大学産学官連携戦略本部、治験活性化委員会と久留米リサーチ・パーク臨床開発推進室が連携して、体制を確立しています。ちなみに、平成15年~平成17年までの実績は、前立腺肥大予防機能性食品の製品化をはじめとして、特許出願35件、ベンチャー企業創出4社、開発プロジェクトの採択11件と優れた成果を創出し、医療分野に貢献しています。
そして、現在の(株)リサーチ・パーク建物に隣接して、製品生産段階に成長したバイオベンチャーの支援とインキュベーションセンター卒業企業の受け皿づくりとして、平成18年度には福岡バイオファクトリー(仮称)の建設を予定しており、平成19年度のオープンを目指しています。
総括的視点として、久留米市は、福岡県が主体となって推進している戦略的産業育成プログラム6事業の中で医療分野のバイオ関連の研究主体になっており、これまでも着実に成果を挙げています。その背景としては、久留米大学は私学であり、これまでも長い間地域の中心的医療機関として貢献し、多くの臨床経験から世界的にも高い評価と実績を残しており、特に地域的な特徴として、C型肝炎の発症率が高く、そのため治療研究が進んでいる点と、市内には醤油醸造や漬物店が多く、発酵分野において、技術が進んでいたことから、異種産業がそれぞれの分野で歴史的に蓄積した技術として保持していたものを全体のものとして、合致させたという発想の転換は多いに賞賛しなければならないものと思います。
また、九州という地理的条件を有効に活かし、今後の経済発展の基盤づくりとして、世界に目を向け、特に東部アジア地域への進出を視野に入れた戦略は私たちも参考にすべきところです。さらに、優秀で熱意を持った人材の登用と、垣根を越えた研究体制を構築していることに、強い印象を受けました。
函館市も将来の都市構想として、「国際水産・海洋都市」の実現のため、世界的に評価の高い北大水産学部を中心として、産学官の連携を構築していかなければなりませんが、そのためには、人材の確保、財政の確保、充実した施設の整備、そして、産学官における横の連携強化と縦割り組織における弊害の排除、また、函館市だけに固執することなく国内の他都市や世界との交流や研究成果の共有等、積極的に取り組んで行かなければ世界の潮流から乗り遅れてしまいます。
現時点においては、未来都市構想の実現に着手した段階ですが、函館市の将来に直結する大きなプロジェクトの実現を再確認した調査でした。
下関市調査
<所見>
「漁業振興(栽培漁業センターの管理運営等)について」
下関市は、平成17年2月に近隣四町と合併し、人口約296,000人の新下関市としてスタートを切り、同年10月に山口県で初の中核市になったという、函館市によく似た歩みをしている町である。
代表する味覚のふぐは、秋から春の彼岸までと言われているが、養殖技術の発達で、一年中食べる事が出来るようになったと言われている。
調査先の下関市栽培漁業センターは、漁業活性化の柱となる海域特性にあった計画的な漁場づくりを行っている。また、新たな増養殖事業の開発、定着に向け、中間育成施設、実習・実験施設(未整備)、管理施設などを有し、栽培漁業推進の核となる施設である。センターは広く市民にも新しい漁業への取り組みに理解を深めてもらうために、漁村と都市の交流拠点としての活用も検討し、地域の活性化を図ろうとしている。
建設予定の実習・実験施設では、トラフグ、カサゴ、アサリ、ウニなどの増養殖技術の開発を行うと共に、藻場造成のために用いるワカメ、アラメ、アマモ等の藻類の培養を実施し、アワビ、サザエ、ウニなどのえさとしての生産に取り組むという。
種苗の中間育成については、漁業者の要望に基づき、アワビ、クルマエビ、ガザミを実施している。
山口県では、県と市がそれぞれの役割を分担し、県では種苗の生産、市ではそれを購入し中間育成、放流事業を行っている。県からこれらの種苗を購入し、外敵から身を守れるサイズまで中間育成をし、漁業者の手によって最適な場所に放流することで、持続的に資源を利用することが可能となり、漁家経営の安定が図られている。
アワビ、クルマエビ、ガザミはそれぞれ13ミリメートルを1年かけて30ミリメートルまで、13ミリメートルを約1か月で30ミリメートルまで、ミリメートルを約7日間で11ミリメートまで中間育成し、69円/1個、2.9円/1尾、3.1/1尾で管内漁協に有償配布し、漁業者が適地に放流している。
センターでは、15年度に約854万円、16年度に約1,200万円、17年度に約1,140万円の売り払い収入があったが、17年度には約6,850万円の生産増大効果を見込んでいると言い、その事業効率の良さが伺われる。
- クルマエビについては、100万尾の生産能力があるが70万尾程度に放流を縮小している。全国的に漁獲が少なくなってきている傾向にある。食物連鎖の底辺に位置することから、天敵も多く、放流しても大きくならないなどの悩みを抱えており、今後は放流のサイズ、方法、場所などを県と協議しなければならないとしている。また、日本海側では彦島の、瀬戸内海側では宇部などの漁師により、いずれも底引き網で漁獲され、下関市の漁師が困っている現実がある。
- アワビについては、18万個の出荷、放流をしているが、漁獲され市場に出荷された物の約8割が放流したものだとしている。センターが1ヶ69円で漁業者に売り、2~3年で漁獲したものが1,500~2,000円で売れるようになる。センターの売り払い収入約1,200万円のうち9割がアワビである。69円が高いという漁業者からの声があるが、さらに効率よく漁獲するために、地先によって、潜水して放流するところや、船からばらまく放流などまちまちなので、最良の方法を指導しなければならないとしている。
- ガザミは、縄張り意識が強く、共食いが激しいため常に数が減っていく。朝、昼、晩と人工餌料をやり、飽食の状態にしておく。追跡調査をしていないが、漁師からは良く捕れるようになった、よく見かけるようになったという報告が寄せられている。要望調査などを行う事で、現在の24万尾の放流が今後増えていく傾向にあるという。
- 魚については移動が激しいために、行政と事業者がお金を出し合って広域的に取り組み、地先ごとにトラフグ、マダイ、ヒラメの中間育成を行っている。
- 昔良くとれていたアサリが海がきれいになると同時に捕れなくなってしまった。きれいになったことで代わってハマグリが捕れ始めている。内海でハマグリを放流して試験を行っている。海の状況の変化と共に、適地として育って行くものもある。
研修施設が未整備のため、廊下で立ったままで説明を受けることになってしまい、そのような状況から十分な質疑が出来なく、残念な思いがあった。これらの事業により受益する漁業者の数や、その年間の水揚げ高等、漁業者の生活実態や、販路や主な消費地。輸入物との競合などあるのか。また今回のテーマに無く調査できなかったが、彦島漁協の女性を中心とした企業グループ、「漁師のお店、彦島シーレディス」の活動状況にも興味を持った。
市町村合併によって全国でも屈指の水産都市になった函館市にとって昆布は、イカに次いで漁獲金額の約30%(平成16年度)を占める重要な産物であり、養殖昆布がその半数以上を占めている。
主産地である南茅部地域においては、昭和45年に昆布養殖事業が本格化されて以来、漁家経営の安定に大きく寄与している。しかし、毎年のように昆布の芽落ち、穴あき等、原因不明の困難な問題が持ち上がりながら、根本的な解決を見るに至っていない。
当初から水産庁北海道区水産研究所、北大水産学部、函館水産試験所(普及指導所)の専門知識を有するスタッフのもとで、採苗から生産まで指導を仰ぎながら、漁協自ら種苗センターの運営にあたってきた経緯があるが、最近では、漁協職員相互の採苗技術の継承と、漁業者の経験に頼る養殖事業が繰り返され、学術的な 裏付けや、検証がなされていないのが現状のようである。
昆布養殖事業は、漁業者の減少、高齢化など諸問題を抱えている漁村において、将来的にはグループでの作業や、年齢に応じた生産活動が出来るなど、きわめて融通の利く事業であり、今後も漁業振興の柱となるものである。それだけに、いま注目を集めているガゴメ昆布の養殖技術の確立による増産対策や有効活用。また、昆布の養殖においても、地球温暖化による海水温の上昇が考えられる中、品種の改良にもいち早く取り組む事も重要な課題だと思われる。
下関市における、種苗の中間育成の現場を目の当たりにしたとき、もう一度養殖事業の原点に立ち返り、昆布養殖の根幹に関わる技術支援、指導を行うことの出来る人材や、種苗、採苗のエキスパートの招聘、育成に取り組む事が行政に課せられた課題であり、そのために漁協と協議、連携を深める必要性を痛感したところである。
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