公開日 2014年03月27日
更新日 2021年12月14日
民生常任委員会行政調査
平成25年11月7日木曜日から11月9日土曜日
11月7日 高松市調査
高松市調査の写真
NPO法人懇談会の写真
<所見>
高松市は、人口42万8,000人余りで、瀬戸内海に面し、豊臣秀吉の家臣・生駒親正が築いた居城を高松城と名づけたことに発し、城下町として栄えてきた。
昭和63年に瀬戸大橋が開通し、平成元年には新高松空港が開港、平成4年に四国横断自動車道が延伸開通したことで、市を取り巻く環境も大きく変化する中、平成11年には中核市に移行している。
高松市は、合計特殊出生率が1.50と、全国平均1.39より高く、函館市1.19を大きく上回っている。
その理由は、今回調査の印象として、豊富な自然と温暖な気候だけではなく、今回は詳しく話を聞く余裕がなかったが、資料などから見て、母子保健事業を含めて保健事業が充実していることがあるのではないかと感じた。
今回の調査対象事項である産後ケア事業について、高松市健康福祉局保健所保健センターで、市としての取り組みについて説明を受け、質疑応答を行った後、受託事業所である「ぼっこ助産院」を訪問し、説明・質疑応答の後、施設を見せていただいた。
高松市保健センターでは、副センター長の猪原良輔氏と母子保健係長から説明を受けたが、高松市では転勤族が多く、また核家族化の進行で、出産・育児などに不安を感じている人が多くなっており、一定の期間、助産所で母乳管理、沐浴の仕方、赤ちゃんの世話について指導を受けることで、自宅での育児をスムーズに行えるようにする「産後ケア事業」について、助産師会から実施の要望があり、受け入れ施設が整備されたことから導入に至った。
事業の実施は平成19年9月で、要綱にもとづいて実施されている。その内容は、市内に住所を有し、出産・退院後の産婦および新生児で、1産褥期の回復に不安を持っている、2育児不安が強い、3休養、栄養管理などが必要な方が利用でき、利用期間は原則7日間までだが延長も可能である。
利用できる施設は、ぼっこ助産院と松本助産院の2カ所となっているが、実際に事業として利用されたのは、ぼっこ助産院1カ所のみということであった。その理由は、他の1施設の立地条件が不便だからではないかというのが、保健センターの担当者の見解であった。
1日当たりの利用料は2万円で、そのうち自己負担額は市民税課税世帯で1万円、非課税世帯で5,000円、生活保護世帯は自己負担額なしとなっており、市の負担経費=事業費は平成22年度に利用者28件、延べ日数34日で41万円だったものが、平成23年度は20件、62日、62万円、平成24年度は28件、122日、139万円、平成25年度は予定で30件、153日、163万円(上半期実績は、20件、79日、79万円)で、利用者数は大きく変動しないが、着実に利用日数がふえているのは、効果が利用者に受け入れられていると見るべきではないか。
また、平成24年度は前々年度などと利用者数が変わらないにもかかわらず、委託料が大きくふえた理由を尋ねたのに対しては、平成24年度は28件中25件が課税世帯であるが、課税世帯1件、生活 保護世帯2件で、生活保護世帯での利用日数がふえたことに原因があるとのことであった。
高松市でも晩婚化が進んでおり、核家族化など、出産を取り巻く状況は悪化していることから、事業実施後の評価は実施主体の市では、育児不安の軽減や児童虐待防止につながっていること、事業者=助産院では育児技能が習得でき、安心して自宅に戻っている、利用者からは不安が軽減し、休養もでき、夫や家族の協力も得られるようになったことや相談窓口が分かったなどと、事業の効果は高いものと思われた。
事業受託事業所である「ぼっこ助産院」では、NPO法人いのちの応援舎の山本文子理事長と眞鍋由紀子副理事長に応対いただいたが、山本氏は全国各地からの講演要請が多く、不在なことも多いそうで、現在の法人並びに助産院の実質的運営は眞鍋氏に任されているようである。
ぼっこ助産院では、平成18年2月に開設後、翌年から産後ケア事業を導入したい旨を市に相談し、市の補助事業として認可されたとのことで、民間発想の民間主導で取り組まれたことが分かった。
ぼっこ助産院は通常の出産を取り扱っており、そのまま産後ケア事業を利用することが可能で、利用実績の半分ほどを占めているほか、近年は香川大学附属病院や赤十字病院の退院者の利用もふえているとのことであった。
最近の事例をもとに説明を受けたが、近年出産入院日数の短期化の中で、育児技能が不足している母親がふえており、病院では多忙だからという理由でゆっくり相談できないことも、助産院では助産師とゆっくり関わることで、子どもとの接し方や子どもの世話など、母として持っている力を引き出すことができていることが感じられる。
ぼっこ助産院ではこの他、補助事業ではないが、授乳指導を実施していたり、NPO法人全体では、病後児保育・託児「もも」や、0~3歳までの子と親のおやこ広場「ひなたぼっこ」、高齢者を対象にデイサービス「ひなた」の各事業を実施しており、子どもから高齢者までがともに暮らす、世代間を超えた交流や意思の疎通が形成される運営になっていると感じられた。
また、同院には社団法人香川県助産師会の事務所が同居しており、「すこやか助産師センター」として、各種事業を展開している点も優れた施設運営であり、助産院の経営にも資するものであるが、施設内には空室もあり、他事業所・施設で同様な経営が可能かどうかは不明である。
いずれにせよ、産後ケア事業は時代の要請であると思われ、費用や自己負担額の多寡により、事業費や利用者数に影響を与えるだろうが、出生率を高める取り組みや、産後鬱を抱える母親・家族の安心、子どもの虐待を防止するためにも、積極的に、そして早期に取り組み、推進していくべきものと感じた。
11月8日 世田谷区調査
<所見>
世田谷区が育児不安の早期解消による児童虐待の未然防止をめざし、武蔵野大学と共同で平成20年3月に開設した「産後ケアセンター桜新町」では、育児に不安があり、家族などの支援が受けられない産後4カ月未満の母親と乳児が宿泊や日帰りで滞在する施設で、助産師ら専門スタッフが常駐し、育児相談や乳房のケア、授乳や沐浴の指導、カウンセリングなど産後の母親の心身を守る取り組みを行っている。母親は滞在中、睡眠や食事、母親同士の交流などの時間を確保するため、スタッフに随時、子どもを預けることもできる。
萩原玲子センター長は、出産後の生活の変化で精神的に不安定になる母親がいることに触れ、「お母さんが元気でなければ育児はできない」と強調する。
また、世田谷区子ども部子ども家庭課竹中課長は、平成14年度の出生数5,880人に対し、平成24年度は、7,433人と増加傾向にありその中で、35歳以上の高齢出産が2,973人と全体の40%で他の自治体と比較しても多いと説明。
出生順位別の割合は、第一子が60%と半数以上を占めていることなどから、核家族化が進行し、地域のコミュニティーも希薄化する中、一人で悩み孤立する母親は多く、自分の両親が高齢だったり、働いていて、全面的に頼れないケースもあると強調した。同センターの存在は母親や家族にとって、心強い“救いの手"に なっている。
函館市では、「こんにちは赤ちゃん事業」で保健師などの専門職が生後4カ月までの全戸訪問により、母親の心理状態のチェックや育児相談などを行っている。今後は、これにより、母親が直面している悩みをキャッチし、出産直後の母子の心身をサポートする「産後ケア」を取り入れ、助産師などが付き添って授乳指導や育児相談を行うことが出来れば、母親にとって、とても心強い存在になるに違いない。
世田谷区では、保育園等の待機児童問題や病院の空きベッド不足により、新規にこのような施設を開設している。
函館市で同センターのサービスを行うにあたり、新規での施設開設、病院での産後ケアサービスの開設等、調査、研究をさらに進め、本市の現状に沿う取り組みを早急に進めなければならない。
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