公開日 2018年09月03日
更新日 2021年12月14日
花粉症とは
花粉症のメカニズム
花粉症は,体内に侵入した花粉を異物と認識し,この異物(抗原)に対する抗体を作り,再度侵入した花粉を排除しようとする免疫反応です。 一般的には免疫反応は身体にとって良い反応ですが,時には免疫反応が過剰となり,身体にとってマイナスに働いてしまう場合があります。
花粉症の症状 鼻 : くしゃみ,鼻水,鼻づまり 目 : かゆみ,涙,目やに,結膜の腫れ その他 : 喉のイガイガ,頭痛,皮膚のかゆみ,イライラ,不眠 など |
花粉症を発症するまで
花粉症は,本人や家族に何らかのアレルギーの素因を持っている人に発症しやすいと考えられています。
アレルギー素因を持った人は,身体の中に花粉が入ると,その花粉(抗原)に対応するための抗体を作ります。
その後,数年から数十年花粉を浴びると,やがて抗体が十分な量になり,再び花粉が身体の中に入ってくると花粉症を発症します。
近年は,飛散する花粉量が増加しているため,抗体が十分な量になるまでの期間が短く,小さな子どもでも花粉症にかかるようになりました。
花粉症の増加要因と症状を悪化させるもの
日本において花粉症を有する人の数は,約16%,特に30~50代に多いと言われています。
また,全国的な調査では,2008年のスギ花粉症の有病率が10年間で約10%増加していることが分かりました。
花粉症患者増加の主な要因 ・ 飛散する花粉数の増加 ・ 母乳から人工栄養への切り替え ・ 食生活の変化 ・ 腸内細菌の変化 ・ 感染症の減少 ・ 大気汚染 ・ 喫煙 |
花粉症の症状を悪化させる主な要因 ・ 空気中の汚染物質 ・ ストレスの影響 ・ 食生活など生活習慣の欧米化 ・ 喫煙 ・ 換気の悪い部屋でのストーブやガスレンジ などの燃焼による室内環境の汚染 ・ 春先の黄砂 |
主な花粉と飛散時期
日本に多い花粉症
これまでに約60種類の花粉アレルギーが報告されていますが,そのうち花粉症は約50種で,大半は農家の方がハウス内で受粉作業などを行う場合の特殊なものです。
全国的に最も多いのは,スギ花粉を原因とするスギ花粉症で,ヒノキの花粉もスギ花粉症の原因となります。
樹木の花粉 : スギ,ヒノキ,シラカバ,ハンノキ,オオバヤシャブシ,ケヤキ,コナラ,クヌギ など
草本の花粉 : イネ科のカモガヤ・オオアワガエリ,キク科のブタクサ・ヨモギ,アサ科のカナムグラ など
スギ | ヒノキ | シラカバ | ハンノキ |
カモガヤ | ブタクサ |
ヨモギ |
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自分がどんな季節に症状が出るかで,原因となる花粉を推定できますが,耳鼻咽喉科などの専門の医療機関で原因花粉を特定する検査を受けることが可能です。
主な花粉の飛散時期
花粉の飛散する時期
スギ,ヒノキ: 春が中心で,秋にも少量の花粉が飛散することがある
イネ科 : 種類が多いために,春から初秋までの長い期間飛散する
キク科,アサ科 : 夏の終わりから秋にかけて飛散する
花粉の多い日
花粉は,飛散が始まって7日から10日後くらいから花粉の量が多くなってきます。
その後,4週間程度が花粉の多い時期に当たり,この期間内に次のような天気になると花粉が特に多くなります。
・ 晴れて,気温が高い日
・ 空気が乾燥して,風が強い日
・ 雨上がりの翌日や気温の高い日が2,3日続いたあと
花粉の多い時間帯
花粉が多くなる時間帯は,その日の気象条件や季節によって変わりますが,一般的には昼前後と日没後に多くなっています。
これは,気温が上がって午前中に飛び出した花粉が数時間後に都市部に到達するためと,上空に上がった花粉が日没後に地上に落下してくるためと考えられています。
花粉量や種類の地域性スギは北海道の南部から九州にかけての広い地域に植林されており,特に東北地方と九州に多くなっています。 ヒノキは北海道と沖縄を除く各地に植林されており,東海地方から西に多くなっています。 シラカバの花粉は北海道の平野部や標高の高い地域に多くなっています。 ハンノキは,林道沿いなどに多く見られる植物です。
<2017年函館の花粉飛散情報>
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北海道道立衛生研究所 北海道の花粉情報より
花粉症の予防と治療
花粉の接触を防ぐ
花粉症の症状を緩和させたり発症を遅らせるためには,花粉についての知識を持ち,花粉の予測や花粉情報を有効に使うことで,いかに花粉を避けるかが基本になります。
マスク
マスクの装用は吸い込む花粉をおよそ3分の1から6分の1に減らし,鼻の症状を軽くする効果があり,性能の良いマスクでは95%以上の花粉をカットできるものがあります。
顔とマスクに隙間ができるとそこから花粉が入ってしまうので,マスクは顔にフィットするものを選び,さらに息がしやすいもの,衛生面からは使い捨てのものが推奨されます。
また,マスクの内側にガーゼを当てること(インナーマスク)でさらに鼻に入る花粉が減少します。
<インナーマスクの作成方法> 材料:市販のガーゼと化粧用のコットン・ ガーゼを縦横10cm程度に切ったものを2枚用意する ・ 化粧用のコットンを丸めて,1枚のガーゼでくるむ(インナーマスク) ・ 市販の不織布のマスクにもう1枚のガーゼを4つ折りにしてあてる ・ 鼻の下にガーゼでくるんだコットン(インナーマスク)を置く ・ ガーゼをあてたマスクを装着する ・ 息が苦しい場合にはコットンの厚さを半分にする |
メガネ
通常のメガネを使用した場合,メガネを使用しない場合に比べて,眼に入る花粉量はおよそ40%減少し,防御カバーのついた花粉症用のメガネではおよそ65%も減少することが分かっています。
また,花粉の飛散している季節にコンタクトレンズを使用すると,コンタクトレンズによる刺激が花粉によるアレルギー性結膜炎の症状を増幅する可能性があるため,メガネに替えた方がよいと考えられています。
<マスク・メガネの効果>
項目 | 鼻腔内花粉数 | 結膜内花粉数 |
マスクなし メガネなし |
1,848 | 791 |
通常のマスク 通常のメガネ |
537 | 460 |
花粉症用マスク 花粉症用メガネ |
304 | 280 |
日本医科大学大学院医学研究科教授 大久保公裕氏 提供
服装衣類の素材や織り方などによって花粉の付着の程度が大きく異なります。 一般的にウール製の衣類などは,木綿や化繊に比べて花粉が付着しやすく,花粉を屋内に持ち込みやすいので,花粉飛散シーズンの外出時の服装は,外側にウール素材の衣服は避けた方がよいでしょう。 また,人間の身体で花粉が付着しやすいのは,露出している頭,顔,手などで,頭と顔はつばの広い帽子をかぶることで,手は手袋を使うことで花粉の付着量を減らすことが可能です。 |
<素材による花粉付着率>
素材 | 綿を100とした場合の花粉付着率 |
ウール |
980 |
化繊 |
180 |
絹 |
150 |
綿 |
100 |
東邦大学理学部訪問教授 佐橋紀男氏 提供
花粉を落とす
手洗い・うがい・洗顔 外出から帰ってきたら,衣類や髪の毛の花粉をよく払ってから室内へ入り,手洗い・うがい・洗顔をして花粉を落としましょう。 また,鼻うがいや目洗いも効果的ですが,水道水で洗うと粘膜を傷めることがありますので,市販の専用剤や精製水,生理食塩水(0.9%の食塩を溶かした蒸留水)を体温程度に温めて使用するとよいでしょう。
鼻をかむ 鼻水をすすってしまうと,せっかく排出しようとしている花粉をいつまでも鼻の中で往復させるばかりか,すすった鼻水が耳のほうに流れ混んでしまい,中耳炎を引き起こすことが分かっています。鼻水はすすらずに,体外へ排出しましょう。
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室内の換気と掃除
花粉飛散シーズンに窓を全開にして換気すると,大量の花粉が室内に流入してしまいます。
換気が必要な時は,窓を開ける幅を10cm程度にし,レースのカーテンをしたり,なるべく花粉の飛散が少ない時間帯に済ませるようにしましょう。
流入した花粉は床やカーテンなどに多数残存していますので,床は掃除機をかけた後,なるべく水拭きをし,カーテンは定期的に洗濯してください。
また,花粉飛散シーズンには布団や洗濯物を外に干さないようにし,外に干した時は,花粉をしっかり払ってから取り込みましょう。
免疫機能を向上させる
睡眠不足や偏った食生活,運動不足やストレスなどが原因で体内環境のバランスが崩れると,体に不調が起こりやすくなります。花粉症は,その不調が免疫系に表れたもののひとつです。
花粉症の予防や症状の緩和のためにも,生活習慣を見直しましょう。
・ 十分な睡眠 ・ バランスの良い食事 ・ 適度な運動 ・ アルコールは控えめに ・ 禁煙 |
・ 疲労を避ける ・ 身体を冷やさない ・ 身体をほぐす |
花粉症の症状が出たら
花粉症が疑われたら,早めに医師の診察を受けましょう。花粉症の症状が重い場合には耳鼻咽喉科や眼科での受診をお勧めします。他に内科や小児科,アレルギー科などでも診療を受けられます。花粉症の薬は,時期と症状によって異なるため,医師とよく相談してから,自分に合った薬で症状を抑えることが大切です。
初期療法花粉の飛散開始約2週間前または症状の軽い時から治療を始めることで,症状の発現を遅らせたり,症状を軽くしたりすることができます。
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薬物療法
経口薬,点鼻薬,点眼薬などが処方されますが,現在は薬物だけでは花粉症の症状を完全におさえることは難しく,自らが原因である花粉のばく露から身を守るセルフケアと薬物を用いるメディカルケアを同時に行うことが必要になります。
アレルゲン免疫療法(減感作療法) 花粉症を完治する可能性があると言われていますが,治療薬を長期間にわたって注射する必要があり,また,副作用の発現にも十分に気をつける必要があります。現在,注射の必要がない,舌下投与法によるアレルゲン免疫療法の開発が進められています。
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