平成24年度の教育行政執行につきまして,函館市教育委員会の基本方針を申し述べます。 少子・高齢化やグローバル化,情報化などが急速に進展する中,市民が社会の変化に対応し,新しい時代を切り拓いていくためには,柔軟な思考力や他者との関係を築く力,知識や技能を活用して課題を解決する力などを身に付けることが重要であり,その機会を拡充し,より豊かな環境をつくりあげていくことが求められております。 社会に対応する力は,生涯を通じてさまざまな場面で育まれ,その学びは,市民一人ひとりが充実した人生を送る源泉であり,活力ある社会をつくる礎となりますことから,行政と各種団体,学校,地域など多様な主体が連携・協力し地域コミュニティを醸成する中で地域の教育力を高めるとともに,すべての人々が人生の各段階において多様な目的をもって学ぶことができる生涯学習社会の充実に努めてまいります。 なかでも,学びの土台を築く学校教育については,子どもたちが健やかに成長するため,知・徳・体をバランスよく育むことができるよう,教育活動の一層の充実を図るとともに,地域と一体となった学校づくりを推進してまいります。 以下,教育委員会として3つの重点目標を掲げ,取り組みを進めてまいります。 第一は,豊かな人生を支援する生涯学習の充実であります。 生涯学習の推進にあたっては,さまざまな学習活動を通して自らを高め,その成果を生かすことのできる仕組みづくりが重要であります。 このため,関係団体等との連携を深めながら,さまざまな生涯学習事業を企画・実施するとともに,多様な学習情報を提供し,市民の自主的な学習活動を支援してまいります。 また,文化芸術活動を通じての豊かな感性の醸成や,スポーツ活動を通じての健康づくりを推進するため,鑑賞機会や参加機会の拡充に努めるほか,郷土の歴史を学び,郷土を愛する心を育むため,貴重な文化遺産の保存・活用を図ってまいります。 第二は,子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進であります。 学校教育におきましては,子どもたちが変化の激しい社会において必要となる「生きる力」を身に付けるため,確かな学力と豊かな心,健やかな体を育むための調和のとれた教育活動を推進していくことが重要です。 このため,「函館市義務教育基本計画」に基づき,学校・家庭・地域が「対話」と「協働」を基調としながら手を携え,地域と共に子どもたちの「生きる力」を育む学校教育の推進に努めます。 また,新しい学習指導要領の全面実施に的確に対応するとともに,子どもたちの学力向上に向けた取り組みを推進してまいります。 第三は,未来を拓く教育施設の整備であります。 市民の学びに対するニーズが多様化する中で,文化・スポーツ活動の拠点となる社会教育施設の充実を図ることは,極めて重要であります。 このため,市民の健康増進や体力向上,さらには地域の活性化や振興にも寄与する施設について,その整備を進めてまいります。 また,公教育の場として子どもたちの安心・安全を確保するため,耐震化や衛生管理などの学校施設の整備を進めるとともに,教育活動の質を高めるための設備など,学校の教育環境の充実に努めてまいります。 こうした重点目標のもと,教育委員会として取り組む主な施策について申し上げます。
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1 豊かな人生を支援する生涯学習の充実 一点目は,豊かな人生を支援する生涯学習の充実のための施策であります。 市民の多様な学習活動を支援する「まなびっと広場」や,学習活動の担い手を取りまとめた「生涯学習リーダーバンク」の一層の普及・拡大を図るとともに,市民自らの企画・運営による「まなびっと体験講座」の充実を図ります。 また,学習した成果や経験を生かした活動ができるよう,ボランティア養成講座を開催するとともに,高齢者を対象とした事業の充実を図り,その受講者の自主的な活動なども支援してまいります。 文化芸術の振興につきましては,小・中学校などに芸術家等が出向き,子どもたちに文化芸術のすばらしさや楽しさを体感してもらうことを目的とした「文化芸術アウトリーチ事業」を引き続き実施するとともに,将来の音楽家を目指す本市や国内外の青少年を対象に,一流の音楽家を函館に招き,その音楽に触れ,指導を受ける機会を提供する音楽合宿「イカール国際ミュージックキャンプ」や西部地区の空き家,空き店舗を利用したアートイベント「函館トリエンナーレ」など,市民の自主的・創造的な文化芸術活動の支援に努めます。 また,函館市文化団体協議会など各種団体との連携を深め,活動を行う環境の整備・充実など,地域に根ざした文化芸術の振興を図ります。 さらに,市制施行90周年を記念し,市民に文化と平和に対する思いをより深めてもらうことを目的に,日本ペンクラブとの共催により,文筆家等のリレー対談などを行う「平和の日の集い」を開催します。 文化財につきましては,史跡垣ノ島遺跡の公有化を図るなど,埋蔵文化財の保存・活用に取り組むとともに,特別史跡五稜郭跡の環境整備を進めます。 また,重要伝統的建造物群保存地区につきましては,都市景観形成地域との一体的な取り組みを進めるとともに,引き続き,伝統的建造物の修理に対する助成などを行い,歴史的な町並みの保護・保存に努めます。 博物館におきましては,幕末から明治にかけて函館で活躍した写真家と,その功績を紹介する写真展を開催するなど,市民や観光客のニーズに応える事業を実施します。 中央図書館におきましては,さまざまな分野の多様な資料の収集,提供,収蔵に努めるとともに,絵本の読み聞かせなど図書館ボランティアとの協力により,市民と共に歩む図書館として,より一層のサービスの提供に努めます。 スポーツの振興につきましては,市民が身近にスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現に向け,総合型地域スポーツクラブの育成・支援を進めるとともに,ハーフマラソン大会の参加定員の拡大やフルマラソン大会の検討に取り組んでまいります。 また,市民のスポーツへの関心や意欲を高めるため,函館市文化・スポーツ振興財団との連携を図り,プロ野球公式戦や日本女子ソフトボールリーグの開催を支援するほか,競技力の向上を目指し,函館市体育協会や各種スポーツ団体との連携を図りながら,各種競技大会の開催支援やスポーツ合宿の誘致を進めてまいります。
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2 子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進 二点目は,子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進のための施策であります。 信頼される学校づくりにつきましては,保護者や地域住民と連携した取り組みの充実を図るとともに,学びや育ちの連続性を重視した学校間の連携や,学校経営の方針に基づく教育活動を地域に公開する実践など,地域に根ざした教育活動を一層推進します。 また,引き続き,特別支援教育支援員や小学校外国語活動サポーターなど,地域住民による効果的な学校支援を行ってまいります。 学力の向上につきましては,子どもたちが分かる喜びを実感できるよう,子どもの自主的な学習機会を提供し地域住民が学びを支援するアフタースクールを開設するなど,学力向上に向けた取り組みを進めます。 また,各学校の課題に応じた学力向上プランへの支援を行うとともに,子どもの実態把握や学校の取り組みの検証を行うための標準学力検査,授業改善の方策を発信する取り組み,生活習慣や学習習慣の定着に向けた家庭への呼びかけなどを引き続き実施してまいります。 新学習指導要領の対応につきましては,その趣旨に基づいた適切な教育活動が展開されるよう,研究協議会や学校訪問を通じた各学校への支援に努めます。 また,南北海道教育センターにおきましては,新教育課程の指導内容に応じた各種研修講座の一層の充実を図り,教師の実践的指導力の向上に努めます。 特別支援教育につきましては,特別支援教育支援員を効果的に活用するとともに,関係機関との連携を図り,一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な支援に努めます。 豊かな心の育成につきましては,全教育活動を通じて,生命尊重や思いやりの心,規範意識などを育む道徳教育の一層の充実を図るとともに,よりよい人間関係を醸成する教育活動や多様な体験活動の推進に努めます。 いじめや不登校につきましては,学校教育指導資料を活用した迅速で的確な対応や,関係機関との連携を働きかけてまいります。 また,教職員と保護者が共に子どもの実態を把握し,ネット上のトラブルを未然に防ぐための情報モラル教育の充実を図ります。 健やかな体の育成につきましては,各学校の実情に応じて体力向上の取り組みを進めるほか,家庭への啓発や関係機関との連携により,食生活などの基本的生活習慣の形成や,性や薬物に関する指導の充実に努めます。 子どもの安全確保につきましては,関係機関や団体との連携を図りながら,子どもが自らの命を守るための防災や防犯に関する教育活動を実施するなど,地域や学校の実態に応じた安全体制の一層の充実を図ってまいります。 学校給食につきましては,衛生管理を徹底し,食の安全の確保に努めるとともに,地元産の農水産物の活用により地産地消を推進します。 国際理解教育につきましては,姉妹都市提携をした高陽(コヤン)市を訪問する「中学生海外派遣事業」の実施や,市立函館高校と白馬(ペンマ)高校の交流活動への支援,外国人英語指導助手や小学校外国語活動サポーターの効果的な活用に努めます。 小・中学校の再編につきましては,子どもたちの望ましい教育環境を整備するため,現在策定中の「函館市立小・中学校再編計画」に基づき,保護者や地域の方々のご意見を伺いながら順次取り組みを進めてまいります。 市立函館高校につきましては,新学習指導要領に的確に対応して編成される教育課程に基づき,一人ひとりの進路目標を実現する教育活動を推進してまいります。
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3 未来を拓く教育施設の整備 三点目は,未来を拓く教育施設の整備のための施策であります。 函館アリーナにつきましては,今日の市民ニーズに応えるスポーツ活動の拠点施設として,また,各種競技大会や大規模なコンベンションの開催にも対応できる施設として設計業務に取り組むほか,旧北高跡地につきましては,サッカーやラグビーなどの市民利用や全道大会等の開催に対応できるスポーツ施設としての整備に向け基本計画を策定します。 また,南茅部公民館につきましては,耐震改修やバリアフリーなどの大規模改修に向けて実施設計に取り組みます。 学校施設の整備につきましては,子どもたちの安全を確保するため,耐震診断を未実施の小・中学校27校すべてで実施するほか,校舎等の耐震化を進めるとともに,引き続き,屋内運動場の暖房整備や学校トイレの改修などに取り組みます。 また,食の安全を確保するため学校給食調理場の環境改善に努めます。 さらに,校務の情報化を図り教職員が子どもと向き合う時間を確保するための校務用コンピュータの整備に取り組みます。
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以上,平成24年度の教育行政執行にあたっての基本方針を申し述べました。 現在,本市におきましては,各学校が自主的・自律的に教育活動を進め子どもたちが生き生きと学ぶとともに,豊かな市民活動のもとで生涯学習関連事業が幅広く展開され社会教育施設が活用されるなど,市民や子どもの学びが着実に歩みを進めております。 今後は,その歩みをより豊かなものとするため,地域のもつ教育力を高めながら,歴史と文化を誇る函館の未来を拓く教育を推進してまいりたいと考えております。 そのため,教育委員会といたしましては,市民一人ひとりが生き甲斐を感じながら学ぶことのできる環境整備の実現と,子どもたちの確かな学びや豊かな心,健やかな体を育む学校教育の充実に向けて,市民と協働する教育行政のより一層の推進に努めてまいります。 ご理解とご協力をお願いいたします。
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