平成25年度の教育行政執行につきまして,函館市教育委員会の基本方針を申し述べます。 現在,国におきましては,少子高齢化やグローバル化が進展するなかで,多様な文化芸術や勤勉性などの日本固有の長所を踏まえ,「教育振興基本計画」の第二期計画が,「自立,協働,創造」の理念のもとで審議されており,本市におきましても,さまざまな社会情勢の変化に対応しつつ,函館らしい教育施策を充実・発展させていくことが求められております。 市民が生涯を通じて自己を磨き,高め,そして社会に貢献していく,そうした生涯学習社会の充実を図るためには,函館に息づいてきた「学び」の風土やコミュニティの総合力を最大限に生かしながら,行政と各種団体,学校,地域などが連携・協力し,家庭教育や学校教育,社会教育,個人の自学自習など,一人ひとりの市民が取り組む学びを支援することが大切であります。 なかでも,「函館市義務教育基本計画」の策定から5年が経過し,計画の後半を迎える学校教育については,一人ひとりの子どもを大切に育むため,調和のとれた教育活動の充実を図るとともに,保護者や地域住民と一体となって,学力向上やいじめ問題への対応などの今日的な課題をはじめ,学校を取り巻くさまざまな課題の解決に努めてまいります。 以下,教育委員会として3つの重点目標を掲げ,取り組みを進めてまいります。 第一は,豊かな人生を支援する生涯学習の充実であります。 「団塊の世代」が定年退職期を迎えるなかで,市民一人ひとりが生涯にわたる主体的な学習活動を通して,郷土に誇りをもち,自らを高めるとともに,それぞれが社会のなかで役割を果たし,地域に貢献することで心豊かに共に支え合うことのできる社会を実現することが期待されています。 このため,多様な活動を行っている関係団体等と連携し,さまざまな生涯学習事業を実施し,学習情報を提供するなど,市民の自主的な学習活動を支援するとともに,文化芸術活動やスポーツ活動を通して心身ともに健康で潤いのある豊かな生活を送ることができるよう,鑑賞機会や参加機会の充実を図るほか,貴重な文化遺産の保存・活用に努めてまいります。 第二は,子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進であります。 学校教育におきましては,5年間取り組んできた「函館市義務教育基本計画」の推進項目について,各学校による中間評価を行った結果,今後5か年で重点的・優先的に取り組むべき課題を明らかにし,「確かな学びを積み重ねる取組の充実」,「つながりを大切にした生徒指導の充実」,「いじめ問題や学校安全への対応」,「一人ひとりに応じた特別支援教育の充実」の4つの重点項目を位置付けたところであります。 そのため,これらの取り組みを力強く進めるとともに,家庭や地域,関係機関の連携を生かし,豊かなつながりのなかで,確かな学びを積み重ねることによって,子どもたちの「生きる力」を育む学校教育の推進に努めてまいります。 第三は,未来を拓く教育施設の整備であります。 多様化・高度化する市民の学習ニーズに対応するため,生涯を通して学ぶことのできる環境の整備は,極めて重要です。 このため,市民の生涯にわたる文化・スポーツ活動を支える拠点として,さらには地域の活性化や振興にも資する施設として,各種社会教育施設の整備を進めてまいります。 また,子どもたちの安心・安全を確保するため,学校施設の耐震化を迅速に進めるとともに,衛生管理面など学校施設環境の改善を図ってまいります。 こうした重点目標のもと,教育委員会として取り組む主な施策について申し上げます。
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1 豊かな人生を支援する生涯学習の充実 一点目は,豊かな人生を支援する生涯学習の充実のための施策であります。 行政はもとより民間団体や高等教育機関等で実施しているさまざまな学習情報を提供するとともに,学習活動を単位認定する「まなびっと広場」や活動の担い手を取りまとめた「生涯学習リーダーバンク」の普及・拡大に努めます。 また,高齢者向けの学習講座につきましては,より多くの市民が受講できるよう見直しを行うとともに,受講者の自主的な活動を支援するほか,さまざまな学習の成果を生かすことができるようボランティア養成講座を引き続き開催してまいります。 文化芸術の振興につきましては,小・中学校などに芸術家を派遣する「文化芸術アウトリーチ事業」を引き続き実施するほか,一流の音楽家を函館に招いて実施している音楽合宿「イカール国際ミュージックキャンプ」など,市民の自主的・創造的な文化芸術活動の支援に努めるとともに,函館市文化団体協議会など各種団体との連携により,地域に根ざした文化芸術の振興を図ります。 文化財につきましては,特別史跡五稜郭跡の環境整備に引き続き取り組むほか,昨年世界遺産の暫定リストに追加された史跡垣ノ島遺跡の史跡整備に向けた発掘調査に着手するとともに,史跡大船遺跡と共に世界遺産登録への取り組みを進めてまいります。 博物館におきましては,幕末に函館からアメリカに渡った新島襄を紹介する企画展を開催するなど,市民や観光客のニーズに応える事業を実施するほか,美術品の収蔵庫を整備し,保存環境の改善に努めてまいります。 図書館におきましては,さまざまな分野の図書の収集と提供に努めるとともに,ボランティアによる読み聞かせなど各種事業を展開するほか,引き続き貴重な古文書や写真の「デジタルアーカイブ事業」に取り組んでまいります。 スポーツの振興につきましては,市民が身近にスポーツに親しむことができるよう函館市体育協会や各種スポーツ団体と連携し,各種競技大会の開催を支援するとともに,スポーツ合宿や大会の誘致に取り組んでまいります。また,昨年参加定員を拡大したハーフマラソン大会のさらなる充実に取り組むとともに,関係団体と連携してフルマラソン大会の実現に向けた検討を進めるほか,函館市文化・スポーツ振興財団と連携し,プロ野球公式戦を開催するなど,市民のスポーツへの関心や意欲を高めてまいります。
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2 子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進 二点目は,子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進のための施策であります。 信頼される学校づくりにつきましては,保護者や地域住民と連携した教育実践を取りまとめた学校教育指導資料の活用や,地域への教育活動の公開など,学校からの情報発信を工夫しながら,地域に根ざした教育活動の充実に努めます。また,引き続き,アフタースクールのサポーターや特別支援教育支援員,小学校外国語活動サポーターなど,地域住民による効果的な学校支援を一層推進します。 学力の向上につきましては,昨年,子どもの自主的な学習機会を提供し地域住民が学びを支援するために開設したアフタースクールを拡充し,教育委員会として,子どもたちの分かる喜びや学ぶ力を育む取り組みを進めてまいります。 また,各学校における「確かな学びを積み重ねる取組の充実」のため,函館の子どもたちの実態を踏まえて作成した「学習活動モデル」や「学び方モデル」の活用を促し,義務教育9年間で学力を確実に身に付ける取り組みを各学校に働きかけるとともに,生活習慣や学習習慣の定着に向けた家庭への呼びかけ方法を工夫しながら,学校と家庭の連携を支援してまいります。 さらに,各種研究協議会や学校訪問とともに,校内研究や学習指導などの課題を各学校と協議する場の充実を図るなど,個別の課題解決に向けた支援をより一層緊密に行ってまいります。南北海道教育センターにおきましては,今日的課題に応じた各種研修講座の一層の充実を図り,教師の実践的指導力の向上に努めてまいります。 豊かな心の育成につきましては,全教育活動を通じて,子どもたちに生命尊重や思いやりの心などを育む道徳教育の充実を推進するとともに,いじめを生まないような集団づくりや人間関係の形成を図り,学校全体として「つながりを大切にした生徒指導の充実」に努めてまいります。 いじめ問題への対応につきましては,学校からの報告や保護者などからの相談に基づき,事実関係を把握し的確な対応を学校に指導助言するなど,迅速かつ適切に取り組むとともに,学校への巡回相談などにより,子どもや保護者の不安の解消に努めるなど,早期発見・早期解決を図ってまいります。 子どもの安全確保につきましては,昨年,国が策定した「学校安全の推進に関する計画」に基づき,安全教育や安全管理の充実に努めるとともに,関係機関からの専門的な情報や助言を活用しながら,子どもが自らの命を守るための防災や防犯に関する教育活動を充実し,「いじめ問題や学校安全への対応」を進めてまいります。また,スマートフォンの普及など日々急速に変化する情報化社会に対応できるよう,対処方法や留意事項を保護者や子どもに発信するとともに,被害の未然防止や問題行動の抑止に努めます。 不登校につきましては,日頃からのつながりを大切にした生徒指導を通して,その予防や学校復帰に取り組むとともに,不登校の子どもや保護者の思いに寄り添った教育相談や,適応指導教室などにおける学習や集団適応などの支援に努めます。 特別支援教育につきましては,特別支援教育支援員を効果的に活用する取り組みを工夫するとともに,教育的ニーズに応じた適切な支援を行うため体制の強化を図り,教育相談や就学指導の機能を高めながら「一人ひとりに応じた特別支援教育の充実」を図ります。 健やかな体の育成につきましては,各学校における体力向上の取り組みを進めるほか,家庭や関係機関との連携により,食生活などの基本的生活習慣の形成や,性や薬物に関する指導の充実に努めます。 学校給食につきましては,施設・設備の改善や放射性物質検査の実施など,食の安全の確保に努めるとともに,函館産農水産物の使用の拡充により,地産地消を推進します。 国際理解教育につきましては,姉妹都市である高陽(コヤン)市を訪問する「中学生海外派遣事業」の実施や,市立函館高校と白馬(ペンマ)高校の交流活動への支援,外国人英語指導助手や小学校外国語活動サポーターの効果的な活用に努めます。 小・中学校の再編につきましては,「函館市立小・中学校再編計画」に基づき,子どもたちにとってより望ましい教育環境を提供するという観点から,取り組みを進めてまいります。 市立函館高校につきましては,進路重視型単位制普通高校としての特色や教育活動の状況を広く発信するとともに,教育課程の工夫・改善を図りながら,一人ひとりの進路目標を実現する教育活動を推進します。
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3 未来を拓く教育施設の整備 三点目は,未来を拓く教育施設の整備のための施策であります。 函館アリーナにつきましては,スポーツ活動に加え大規模なコンベンションの開催機能を備えた新たな拠点施設としての整備を進めるほか,(仮称)日吉多目的グラウンドにつきましては,サッカーやラグビーなどさまざまなスポーツの市民利用はもとより,全国・全道レベルの大会やスポーツ合宿などにも対応する施設を目指し,実施設計などに取り組んでまいります。 また,千代台公園陸上競技場につきましては,トラック走路等の改修工事など第2種公認の陸上競技場としての整備を行います。 さらに,南茅部公民館につきましては,改修し多用途に使用可能な地域生涯学習センターへの見直しを行うとともに,函館市公民館につきましては,耐震改修やバリアフリー化などの大規模改修に向けて実施設計に取り組むほか,旧図書館本館につきましては,歴史的な建造物として外観を保存し,書庫として整備してまいります。 学校施設の整備につきましては,子どもたちの安全を確保するため,耐震診断の結果に基づき,緊急度の高い施設については,速やかに耐震化を推進するとともに,屋内運動場の暖房整備や学校トイレの改修などに取り組みます。 さらに,教職員が子どもと向き合う時間を確保するために推進している校務用コンピュータの整備をはじめ,教育の情報化に向けた取り組みを進めてまいります。
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以上,平成25年度の教育行政執行にあたっての基本方針を申し述べました。 いつの時代にあっても,学びは,市民生活に豊かさや活力をもたらす原点であり,教育は,多様な個性・能力を開花し人生を豊かにするとともに,社会全体の発展を実現する基盤であります。 市民一人ひとりの学びは,つながり合ってコミュニティを形成し地域力となり,子どもの学びは変化の激しい社会を切り拓き,未来の函館の礎を築く原動力となります。 そのような学びの実現のために,教育委員会といたしましては,市民一人ひとりの意欲を高めるような教育環境の整備と,組織的に教育の質を高めながら直面している課題を解決する学校力の向上に向けて,今後とも,市民と連携・協働する教育行政の積極的な推進に努めてまいります。 ご理解とご協力をお願いいたします。
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