函館聴覚障がい者協会 石井委員 委員提出資料その2 資料作成:全国手話言語条例普及メンバー 佐藤ひではる 函館聴覚障がい者協会会長 石井昌子  シムコム(日本語対応手話)とろう者の現実について 1.シムコム(日本語対応手話)についての定義と説明  英語名は「simultaneous communication」(サイマルテニアス・コミュニケーション) 短縮語としてシムコムという。コミュニケーションであり言語ではない。 ○1 音声言語と手話言語を同時に話すコミュニケーション方法のことです。日本語訳として「同時法手話」が最初に出て、後に「日本語対応手話」、手指日本語」と言い換えられてきた。日本における用語としては、適切な訳語ができないので、シスコムをそのまま使うのが適当である。現に日本語対応手話や同時法手話という「手話」はない。 〇2 日本でのシムコムは、聾教育の手法として栃木県立ろう学校教諭の提唱【1968(昭和43)年】に当時のギャローデット大学の教育方法が加味されたものといえる。 ○3 シムコムは手話と音声言語(アメリカでは英語、日本では日本語)を同時に話す方法である。 そのためには、音声日本語に対応する手話単語を新しく造語して、助詞などに指文字を積極的に使うなど、これまでの手話を文法も含めて改変しようとした。なかにはろう者の使う手話もあるが、多くは、無理な手話造語があり実用に適さない。指文字結合手話、複合手話、同形語等聞き慣れない言葉があり、そのまとめとして「新・手話辞典」が中央出版から初版が1992(平成4)年1月25日に発行され、現在は改訂版になっている。 ○4 全日本ろうあ連盟、手話言語研究所とも「日本語対応手話」を認めず、かつ実際にこのような手話の普及はない。 〇5 聾学校では、戦後から昭和末期にかけて口話教育一辺倒のため、手話使用が厳しく禁止されているなかで、ともかく「手話」を使おうとする栃木県立聾学校教諭の試みには一定の意義があった。 〇6 聾学校では、教員の手話取得が不十分なので、栃木県立聾学校の提唱するシステム(同時法)は使いやすい面はあった。ただし、聾学校教諭レベルでは、日本語を話しながら手話単語をつけるだけなので、シムコムにも手話にもならない現実がある。 2.アメリカ合衆国の経緯 シムコムは、アメリカのギャロ?デット大学が考案した英語教育の方法です。言語の異なる音声語(英語)と手話(アメリカ手話)を同時に話すことは難しいので、英語を主として、手話を従とすることを基本に一致しない語は手話を改造することにしたのです。自然な手話を無理に英語に合わせようとしたので、ろう学生の反対運動がおきました。現在では、英語と手話をどちらも無理に改造することなく、どちらも分かるように工夫されたので反対は収まっています。 3.辞典と言語の同一性 日本語は、標準語、共通語と方言あわせて一つの言語(日本語)となっています。 ある言語の同一性を判断する根拠は、単語を説明して、それを集大成したその国の国語辞典です。日本の国語辞典は出版社によって数多く発売されていますが、細部の違いはあるとはいえ、そこに掲載されている語彙及び単語の意味説明に大きな差はなく、いずれも日本語です。同じように手話辞典、あるいはこれに類する手話単語集(地方の手話)も多く発売されています。そこに掲載されている語彙及び単語の意味説明には大きな差はなく、いずれも日本の手話です。 4.めざす手話言語法(案)の定義 「手話言語」とは、日本のろう者及び盲ろう者等が、自らの生活を営むために使用している、独自の言語体系を有する言語を指し、豊かな人間性の涵養及び知的かつ心豊かな生活を送るための言語活動の文化的所産をいう。 5.日本語の定義 日本国の事実上の公用語ですが、法令での規定はなく、学校教育「国語教育」で教える。古来日本民族が用いてきた言語で一億余の人が使用する。日本固有の大和語、中国の漢語、近年は西欧からの外来語も多い。標準語(共通語)、東京弁、関西弁等地理的分布を扱う方言による各地の違いも著しい。男女や職業で用語も違う。特徴の一つとして複雑な敬語がある。 6.「手話言語」とは 日本では「手話」という言い方が一般的ですが、国際社会は「サイン(手話)・ ランゲージ(言語)と表現しています。「言語としての手話」の意味をはっきりといえるからです。